アイピーシー

アイピーシー（Inter Press Corporation）出版社：写真集と事業承継の歴史

アイピーシー（IPC）は、かつて日本の出版業界で活躍した出版社です。旧社名はインタープレスで、東京都に拠点を置いていました。創立者で経営者であった藤岡啓介氏は、写真家の中川右介氏の父にあたります。

インタープレスは、特に1990年前後にかけて、非常に特徴的な写真集を数多く世に送り出しました。その多くは、縦長の特大判サイズ（高さ40センチメートル以上）で、高いクオリティと斬新なデザインが注目を集めました。

インタープレス時代の主要作品

インタープレスの出版活動において、最も重要な位置を占めるのは、大判サイズの写真集です。その中でも特に有名な作品として、以下のようなものがあります。

大判写真集
高梨豊『都の貌』(1989年7月)
長野重一『遠い視線』(1989年11月)
沢渡朔『蜜の味』(1990年1月)
土田ヒロミ『宴』(1990年5月)
深瀬昌久『家族』(1991年3月)

これらの作品は、そのサイズ感だけでなく、写真家たちの高い芸術性と、インタープレスの編集力によって生み出された、まさに時代を代表する写真集と言えるでしょう。

その他の主要な写真集
瀬戸正人『バンコク、ハノイ』(1989年1月)
倉田精二『大亜細亜』(1990年3月)
武田花『眠そうな町』(1990年3月)
荒木経惟『平成元年』(1990年4月)
中居裕恭『北斗の街ー遡上の光景』(1990年)
石内都『1・9・4・7』(1990年12月)
深瀬昌久『父の記憶』(1991年3月)
鈴木清『愚者の船』(1991年5月)
中村立行『昭和・裸婦・残景』(1991年6月)

これらの作品は、いずれも日本の写真界に大きな影響を与えた、重要な作品群です。

写真集以外の出版物

インタープレスでは、写真集以外にも様々な書籍を刊行していました。例えば、

有賀ゆう『キミにもできるスーパーエリートの受験術』
菅直人・坂口力ほか『土地問題への提言とQ＆A』
* 『ソヴィエト・アート1920-1930 革命と芸術の時代』

などが挙げられます。

事業承継とその後

インタープレスは事実上倒産した後、1995年6月に、中川右介氏が経営するアルファベータ社が事業を引き継ぎました。ISBNも引き継がれ、例えば「専門用語辞典」などはインタープレス時代からの継続刊行物となっています。

同名他社について

なお、理工学系の学術書出版社であるアイピーシー（ISBN：4-901493-）や、パッケージメーカーの株式会社アイピーシー（IPC：International Package Company）とは別会社です。

インタープレス、そしてアイピーシーは、日本の出版史において、特に大判写真集という分野で独自の足跡を残した出版社と言えるでしょう。その功績は、今日でも多くの写真愛好家や関係者に記憶されています。

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