アパテー

アパテー: ギリシア神話の女神

アパテー（Ἀπάτη）は、古代ギリシアの神話に登場する女神であり、欺瞞や不実、不正、失望といった概念を擬人化した存在です。彼女の名前は、長母音を省略して「アパテ」とも表記されます。アパテーは夜の女神ニュクスの子であり、彼女の兄弟にはモロス（運命）、ケール（運命の女神）、タナトス（死）、ヒュプノス（眠り）、オネイロス（夢）、モーモス（叱責）、オイジュス（老い）、ヘスペリデス、モイライ（運命の三姉妹）、ネメシス（復讐）、ピロテース（運）、ゲーラス（年齢）、エリス（争い）などがいます。このように、アパテーは深い家族関係を持ち、様々な神々とのつながりを通じて人間の様々な感情や状態を反映しています。

古代ギリシアの詩人ヘーシオドスの著作『神統記』に登場し、彼の作品は神々の系譜や性質を詳述しています。アパテーは、他の神々と同様に、特定の性質や影響を持つ存在とされており、その不誠実さはしばしば人間の行動や感情に影響を与える要素として描かれます。

アパテーはローマ神話でも重要な役割を果たし、ここではフラウスという名で知られています。彼女の男性に相当する神はドロスで、両者は欺瞞の特徴を持つ存在として位置づけられています。また、アパテーの対照的な存在として、真実の擬人化であるアレテイアが挙げられます。このように彼女は、真実と虚偽の葛藤を象徴する存在でもあります。

アパテーはまた、パンドーラーの箱の中にある災いの一つとしても語られることがあります。この神話では、パンドーラーが開けた箱から様々な災いが解き放たれる中で、アパテーは人間に対して欺瞞と失望をもたらす存在として関連付けられています。このように、アパテーは希望や真実の陰に隠れた不正や不実を象徴する重要な角色として機能しています。

なお、アパテーに関する記述は、ヘーシオドスの『神統記』だけでなく、キケロの『神々の本性について』（III, 17）やノンノスの『ディオニュソス譚』（VIII, 110）にも見られ、彼女の存在は古代から多くの文学作品や神話に影響を与えてきたことが分かります。

参考文献

• - ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫（1984年）

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