アマサギ

アマサギ（猩々鷺、飴鷺）

ペリカン目サギ科に属する鳥類で、本種のみでアマサギ属（Bubulcus）を構成する唯一の種です。かつてはコサギと同じ属に分類されることもありましたが、体の特徴などから現在では独立した属として扱われるのが一般的です。世界には主に3つの亜種が知られています。

形態

全長は46センチメートルから56センチメートル、翼を広げた際の幅（翼開長）は88センチメートルから96センチメートルほどになります。体重はおよそ0.1キログラムと、サギの仲間としては比較的小型で軽量です。体の大部分は美しい白い羽毛で覆われています。嘴は短く、色はオレンジがかった黄色をしており、脚は黒褐色です。

最も特徴的なのは、季節によって変化する羽色です。繁殖期にあたる夏季には、「夏羽」と呼ばれる姿に変わります。頭から頸、そして背にかけての羽毛が、鮮やかなオレンジがかった黄色、和名の由来ともされる「飴色」に色づきます。また、この時期には頭頂部に冠羽が現れ、背中や胸の飾羽も長く伸びます。さらに、眼の周囲の皮膚や嘴、脚の色も赤みを帯びます。一方、冬季の「冬羽」では、これらの色のついた羽毛は抜け落ち、頭から頸、背中にかけても全身が白くなります。オスとメスで見た目に大きな違いはありません。

分布

アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、ユーラシア大陸南部、そしてインドネシア、オーストラリア、日本、ニュージーランド、フィリピン、マダガスカルといったオセアニア地域を含めた、世界中の温暖な地域に広く分布しています。近年は分布域をさらに拡大しており、南極大陸への進出も試みられているとの観察例もあります。

多くの地域では一年を通して同じ場所に生息する「留鳥」ですが、一部の地域では季節によって長距離を移動する「渡り鳥」としての性質も持ちます。例えば、アメリカ合衆国や朝鮮半島で繁殖する個体は、冬季になるとアフリカ大陸北部やオーストラリア、ニュージーランド、フィリピンなど温暖な地域へ南下して越冬します。

日本においては、亜種アマサギ（Bubulcus ibis coromanda）が主に夏季に本州（宮城県や新潟県より南）の広い範囲の農地に飛来し、そこで繁殖を行う「夏鳥」、あるいは国内を移動する「漂鳥」として観察されます。九州などの比較的暖かい地域では、冬期も移動せずに留まる「留鳥」として確認されることもあります。

生態

主な生息環境は、開けた草原、農耕地、そして湿地などです。普段は単独やつがいで生活することが多いですが、餌場やねぐら、繁殖期には小規模な群れを形成して行動することもあります。活動は主に昼間に行われます。

食性は動物質のものに偏っており、バッタやトンボ、コオロギなどの昆虫類、そしてクモ類を主食としています。また、水辺では魚類、カエルなどの両生類、ヘビなどの小型爬虫類、エビやカニといった甲殻類なども捕食の対象とします。

アマサギの生態で特筆されるのは、大型の草食動物、特に牛や馬の周囲に集まる習性です。これらの動物が移動したり草を食んだりすることで地面から追い出される昆虫などを効率的に捕まえます。時には牛の背中に止まって寄生虫をついばむ姿も見られ、異なる種間での協力関係（共生）の例としてよく知られています。近年では、農耕地を耕すトラクターのような農業機械の後ろを追いかけて餌を探す姿もよく見られます。

繁殖期には、他のサギの仲間と共に大きな「集団繁殖地（コロニー）」を形成します。巣作りは、オスが主に巣材となる木の枝などを集め、メスがそれらを組み合わせて森林の樹上に皿状の巣を作り上げます。日本では typically 4月から7月にかけて繁殖が行われ、1度に2個から5個の卵を産みます。卵はオスとメスが交代で温め（抱卵）、孵化するまでには22日から26日かかります。雛がかえった後の世話もオスとメスが共同で行い、雛はおよそ30日から40日ほどで巣立っていきます。

普段はあまり鳴くことがありませんが、縄張り争いの際などに「アゥ」や「コア コア」、「カウ カウ」といった比較的小さな声を発することがあります。また、ねぐらや営巣地などでは、「ガッ」「ガァァ」といった低い鳴き声が聞かれることもあります。

保全と人間との関係

国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、現在のところ「低危険種（Least Concern）」と評価されており、世界的な絶滅の危険性は低いとされています。しかし、日本国内においては、開発などによる環境の変化や生息地の減少を受けている地域もあり、一部の都道府県では「準絶滅危惧種」や「情報不足」、あるいは「繁殖期減少種」といったカテゴリーに指定され、保全上の注意が必要とされています。

人間との関わりとしては、和名の「アマサギ」は、夏季に見られる頭部や頸の鮮やかな「飴色」の羽毛、あるいはその色が酒好きの伝説上の生き物「猩々」の赤に似ていることに由来するとされています。また、英名の「Cattle Egret」は直訳すると「牛のサギ」となり、前述の通り、牛などの家畜の後をついて歩く習性から名付けられました。近年の農地開発の進展に伴い、アマサギは餌を得やすい環境が増えたため、分布域を広げ、個体数も増加傾向にあると考えられています。

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