アーバンネットワーク

アーバンネットワーク：JR西日本の京阪神エリアを彩った愛称

はじめに

西日本旅客鉄道（JR西日本）は、1989年3月11日より、大阪駅を中心とした京阪神都市近郊区間を「アーバンネットワーク」と呼称していました。JR西日本の経営基盤強化策の一環として、山陽新幹線と大阪近郊路線への経営資源集中、直通運転の拡大、新型車両の導入による所要時間短縮などが進められ、その象徴として「アーバンネットワーク」の愛称が誕生しました。しかし、2000年代後半からは「近畿圏」や「京阪神エリア」といった表現に置き換わり、公式に使用されることはなくなりました。本稿では、その歴史と概要を詳細に解説します。

アーバンネットワークの概要

JR西日本は、JR東日本やJR東海に比べて経営基盤が脆弱とされていました。そこで国鉄分割民営化後、山陽新幹線と大阪近郊の沿線発展が著しい路線に経営資源を集中し、経営基盤の強化を図る方針が採られました。関西圏の特性、すなわち利用距離が長いほどJR利用率が高くなる点、そして東海道・山陽新幹線へのフィーダー路線としての役割を強化するため、直通運転拡大と新快速を中心とした車両の高速化が積極的に推進されました。

1988年3月13日のダイヤ改正で、8線区9区間に地域ごとの愛称が制定され、翌1989年3月11日には京阪神都市近郊区間に「アーバンネットワーク」の愛称が与えられました。当初は姫路駅以西や一部線区は含まれていませんでしたが、1990年3月10日には線区別のラインカラーを導入し、分かりやすさが向上しました。2015年3月14日からは路線記号も導入され、ラインカラーも拡充・変更されています。

路線

アーバンネットワークを構成する路線は、路線図、駅案内、駅名標、車両の種別幕などにラインカラーと路線記号を用いて表示されています。朝日新聞と神戸新聞では、路線愛称名の使用が定着しており、2003年2月1日以降、朝日新聞は愛称表記を原則としています。

車両

1989年から営業運転を開始した221系は、大きな窓と快適な座席が好評で、223系とともにアーバンネットワークの象徴的な車両となりました。その後、207系、321系、225系、323系、227系といった車両が導入され、国鉄時代の車両からの置き換えが進められました。近年は、車両発注が地元の川崎重工業と近畿車輛に集中し、日立製作所への発注は減少しています。2012年からはバリアフリー対応を含めた車両のリニューアル工事が実施され、女性専用車の導入も進められました。

運転系統と直通運転の拡大

国鉄時代から行われていた直通運転は、JR化後さらに拡大し、特急列車の直通運転も開始されました。関西本線と阪和線を結ぶ連絡線の開通（1989年7月22日）により、「くろしお」の一部が新大阪駅に乗り入れを開始。1994年6月の関西空港線開業に合わせて「はるか」の運転も開始されました。1997年3月8日にはJR東西線が開業し、2008年3月15日にはおおさか東線南部分が開業、2019年3月16日には北部区間が開業し、ネットワークの拡大が図られました。

しかし、所要時間短縮を重視した運行ダイヤは、ダイヤ乱れのリスクを高めました。2002年と2005年の事故を受けて、ダイヤ改正で余裕時間が見直され、所要時間が増加する結果となりました。

旅客案内

列車指令所による列車制御の一元化に伴い、旅客案内も拡充されました。1997年3月8日以降、駅の発車標や放送では方面と行先を併記した案内が行われています。2015年3月からは路線記号が導入され、発車標・車内案内表示装置にも表示されるようになりました。発車標はLED式が標準で、遅延情報なども表示されます。異常時情報提供システムでは、路線図形式による運行情報が提供されます。車内案内装置もLCD式に更新が進められています。

駅の利便性向上

1997年のJR東西線開業を機に自動改札機が本格導入され、1999年にはJスルーカード、2003年にはICOCAが導入されました。ICOCAの普及に伴い、Jスルーカードの自動改札機での利用は終了しました。2018年10月からはICOCAポイントサービスが開始されました。

安全対策

転落防止のため、ホーム柵の設置が進められています。可動式ホーム柵や昇降式ホーム柵の導入が進み、夜間視認性向上装置の設置やATS-P型の整備も進められています。

プロジェクト

新駅の設置、主要ターミナル駅の改良、駅周辺の再開発、桜島線の輸送改善、奈良線の複線化、学研都市線の高速化、山陰本線の複線化、おおさか東線整備事業、天王寺駅阪和短絡線複線化、連続立体交差事業などが進められています。また、「JR」を冠した駅名も増加しています。

運行管理システムと運行情報

運転本数の高密度化に対応するため、運行管理システムが導入され、列車の進路を自動制御し、旅客への運転状況案内も行われています。JR東日本との運行情報の共有も行われています。

まとめ

「アーバンネットワーク」は、JR西日本の積極的な経営戦略と輸送力増強策を象徴する愛称でした。その取り組みは、現在も「近畿圏」の鉄道ネットワークの基盤となっています。本稿では、その歴史と取り組みを詳細に解説しました。

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