ウロボロス

ウロボロス：永遠を象徴する環

ウロボロスは、古代ギリシア語で「尾を飲み込む蛇」を意味し、己の尾を噛んで環状になった蛇または竜の図像として知られています。この象徴は、単なる動物の図案を超え、深遠な意味と普遍的な概念を内包しており、世界各地の文化や宗教で重要な役割を果たしてきました。

象徴的意味

ウロボロスには、自己を食む単体のものと、二体が互いを食むタイプがあります。後者の場合、一方は素のまま、もう一方は王冠と翼、肢を持つ姿で描かれます。蛇は脱皮による成長や、飢餓に耐える生命力から「死と再生」や「不老不死」の象徴とされます。その蛇が自身の尾を食むことで、始まりも終わりもない完全な存在、すなわち循環や無限の概念を象徴するようになりました。

ヘレニズム文化圏では、世界創造の完全性や、世界の霊を表すものとして捉えられました。錬金術では、陰陽のような相反するものの統一を象徴し、カール・グスタフ・ユングは、人間の精神の根源的な要素である元型として解釈しました。その他にも、循環性、永続性、始原性、無限性、完全性など、多岐にわたる意味を持ち、多くの文化や宗教で用いられてきました。

歴史

ウロボロスのイメージは、アステカ、古代中国、ネイティブアメリカンの文化にも見られます。中国では、新石器時代の紅山文明の遺跡から、尾をくわえたブタのような頭と蛇の胴体を持つ「玉猪竜」と呼ばれる遺物が発掘されています。この形状はウロボロスとの関連性が指摘されています。現在見られるウロボロスの原型は、紀元前1600年頃の古代エジプトに遡ります。エジプト神話では、太陽神ラーの夜の航海を守護する神メヘンが、ラーをアペプから守るためにウロボロスのようにラーを取り囲んでいました。この概念は、フェニキアを経て古代ギリシアに伝わり、「ウロボロス」という名前が与えられました。

語源

ウロボロスの語源は、「尾を飲み込む（蛇）」を意味する古代ギリシア語の「(δρακων) ουροβóρος（(ドラコーン) ウーロボロス）」です。その後、「ουροβόρος όφις（ウロヴォロス・オフィス）」という「尾を飲み込む蛇」を意味する表現も用いられるようになりました。

宗教との関わり

北欧神話では、世界を取り巻き、自身の尾をくわえて眠る巨大な蛇「ヨルムンガンド」が登場します。キリスト教やグノーシス主義では、ウロボロスは物質世界の限界を象徴するものとされ、環状の形が内側と外側の境界を示すと解釈されました。また、自己を糧とすることが世俗的であるとみなされました。ハンガリーやルーマニアのユニテリアン教会では、教会堂の装飾としてウロボロスが使用されています。

ヒンドゥー教では、世界を支えるゾウ、リクガメ、そしてそれを取り囲む尾をくわえた蛇という構造でウロボロスが表現されています。トルテカ文明やアステカ文明では、ケツァルコアトルが自身の尾を噛んでいる姿で描かれています。

その他の関連性

ウロボロスは、伝説の生物、青銅の蛇、無限ループ、輪廻、ニューエイジ、円相といった概念とも関連付けられています。また、科学者のアウグスト・ケクレが、夢の中で尾を噛む蛇を見たことからベンゼンの構造を思いついたという逸話も、この象徴の不思議さと深さを物語っています。ウロボロスは、単なる古代の図像ではなく、現代においても様々な分野でインスピレーションを与え続ける、普遍的なシンボルと言えるでしょう。

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