エフェメラとは
エフェメラ(ephemera)は、一時的な性質を持つ印刷物や筆記物の総称です。これらは、長期的な使用や保存を意図せずに作成され、役目を終えると廃棄されることが一般的です。しかし、その一時性ゆえに、当時の社会や文化を反映する貴重な資料として、近年では収集の対象となることが増えています。
概要
図書館情報学において、エフェメラは「一枚刷りの印刷物」と定義されることが多く、役割を終えたら捨てられるようなものを指します。具体的には、しおり、グリーティングカード、
手紙、
写真、葉書、
ポスター、チケット、
パンフレット、
チラシ、
マッチ箱などが挙げられます。
ここで注意すべき点は、印刷されていない
手紙や
写真はエフェメラとは区別されるということです。これらは、手稿(マニュスクリプト)やタイプ原稿(タイプスクリプト)として扱われます。エフェメラは、その一時的な性質から、歴史的な出来事や人々の日常生活を垣間見ることができる貴重な資料となるため、
大学図書館、
国立図書館、博物館、
公文書館などで収集・整理・保存されることがあります。
語源
「エフェメラ」という言葉は、ギリシャ語で「一日しか存在しえないもの」を意味する言葉に由来します。ギリシャ語の「epi」(~の上に)と「hemera」(日)を組み合わせた「ephemeros」という言葉が起源で、
カゲロウのように短命な生物や、短期間しか咲かない
花など、一時的なものを指すようになりました。これが
名詞化され、「ephemera」という言葉が生まれました。
エフェメラの例
エフェメラは、私たちの日常生活の中に溢れています。以下に具体的な例を挙げます。
印刷物: ポスター、チラシ、パンフレット、チケット、カタログ、プログラム、包装紙、ラベル、ステッカー、ポストカード、グリーティングカード、メニュー
筆記物: 手紙、メモ、日記、伝票、領収書、請求書
その他: しおり、マッチ箱、コースター、トランプ、写真、ブロマイド
これらの例からもわかるように、エフェメラは非常に多様な形態をとります。その多くは、日常の中で何気なく使われ、すぐに捨てられてしまうものですが、当時の社会や文化、人々の生活を反映する貴重な資料となる可能性があります。
エフェメラの収集と研究
エフェメラは、その多様性と希少性から、収集家や研究者の間で人気があります。収集の対象は多岐にわたり、特定のテーマや時代に焦点を当ててコレクションを形成する人もいます。
また、エフェメラは歴史学、社会学、文化人類学などの分野の研究においても重要な資料となります。例えば、ポスターやチラシからは、当時の社会情勢や宣伝手法を読み取ることができますし、手紙や日記からは、当時の人々の生活や感情を知ることができます。
関連分野
図書館情報学
古文書学
書誌学
文献学
古文書
写本
公文書館
アーキビスト
参考文献
The Encyclopedia of Ephemera: A Guide to the Fragmentary Documents of Everyday Life for the Collector, Curator, and Historian by Maurice Rickards et alia. London: The British Library; New York: Routledge, 2000.
Fragments of the Everyday: A Book of Australian Ephemera /Richard Stone (2005, ISBN 0-642-27601-3)
貴志俊彦『満洲国のビジュアル・メディア――
ポスター・絵
はがき・切手』吉川弘文館、2010
外部リンク
National Library of Australia: National Library of Australia's Ephemera homepage
Ephemera Society of America
Evonian Collection of Ephemera at the British Library
Western Australian Ephemera in the State Library of Western Australia
Ephemera: theory & politics in organization
Hugh D. Auchincloss Middle East Book Collection at Pell Center of International Relations and Public Policy
The John Grossman Collection of Antique Images
The Art of Bookmark - Bookmark Exhibition
ephemera- a popular blog that explores the world of old paper.
Ampersand Vintage
箸袋趣味の会
田中芳男・博物学コレクション
まとめ
エフェメラは、その一時的な性質ゆえに、見過ごされがちな存在ですが、私たちの歴史や文化を理解する上で非常に重要な資料となりえます。日々の生活の中で見かける何気ない紙片も、後世の人々にとっては貴重な文化遺産となるかもしれません。エフェメラに関心をもち、収集・研究することは、過去を理解し、未来を考える上で重要な鍵となるでしょう。