オオサンショウウオ

オオサンショウウオ（大山椒魚）

オオサンショウウオは、オオサンショウウオ科に属する大型の両生類で、日本の固有種です。「ハンザキ」や「ハンザケ」という別名でも知られています。

分布

オオサンショウウオは、日本列島の南西部、具体的には岐阜県以西の本州、四国、九州の一部に生息しています。和歌山県の個体群は、過去に人為的に移入されたものと考えられています。青森県から鹿児島県にかけての捕獲例も報告されていますが、これらは誤認されたチュウゴクオオサンショウウオや、人為的な移入によるものと考えられています。

京都市域では、外来種であるチュウゴクオオサンショウウオとの遺伝子汚染が深刻化しており、賀茂川では在来種が絶滅した可能性も指摘されています。上桂川でも雑種化が進行しており、遺伝的汚染は予想以上に広がっています。そのため、純粋な日本産オオサンショウウオを隔離し、保全する対策が急務となっています。

2024年には、政府が外来種について、飼育や放出を禁じる「特定外来生物」に指定する政令を閣議決定しました。この指定には、交雑個体も含まれます。

種小名の japonicus は、「日本の」という意味を持ちます。

形態

オオサンショウウオは、最大で全長150cmに達することもありますが、野生個体で100cmを超えることは稀で、一般的には50cmから70cm程度です。皮膚は無数の小さな疣状の突起で覆われており、体側面や四肢の後部には襞状の皮膚が伸びています。背面の色彩は暗褐色で、不規則な黒い斑紋が入っています。

上顎中央部に並ぶ歯の列（鋤骨歯列）は、浅い「ハ」の字状になっています。

卵は直径0.5cmから0.8cmで、黄色をしています。

同属のチュウゴクオオサンショウウオは、吻端が扁平であること、黒色斑が大型で独立していること、疣が2個ずつ並んでいることなどで区別できますが、種間雑種では識別が困難です。

生態

オオサンショウウオは完全水生であり、主に標高400mから600mの河川上流域に生息します。しかし、河川の中流や下流で見られることもあり、市街地近くや水田の水路に生息していた例も報告されています。例えば、兵庫県北部を流れる出石川下流での護岸工事の際には、400匹以上が発見されました。

夜行性で、昼間は水辺に掘った巣穴などで休息します。

水中では、遭遇した動物に貪欲に襲いかかり、魚類やサワガニなどを捕食します。ヘビ類やカワネズミを食べた例もあり、共食いもすることがあります。

繁殖様式は卵生です。オスは6月から7月にかけて川辺に横穴を掘り、産卵巣を作ります。産卵巣は毎年同じ場所を利用することが多く、岩の隙間を産卵巣とすることもあります。オスの大型個体は、産卵巣に他のオスが侵入すると争いますが、メスの産卵後には、周囲にいる複数のオスが侵入することもあります。8月下旬から9月にかけて、オスは産卵巣にメスを誘い、400個から500個の数珠状の卵を産ませます。卵は約50日で孵化し、オスは孵化するまで保護します。幼生は生後4年から5年で変態し、幼体になります。生後5年（全長57cm、変態後1年から2年）で性成熟すると考えられています。寿命は野生下でも10年以上とされ、飼育下では51年の生存例があります。

人間との関係

以前は食用とされることもありました。美食家として知られる北大路魯山人は、随筆「山椒魚」で「味はすっぽんを品よくしたような味で、非常に美味であった」と述べています。

しかし、河川改修やダム・堰堤建設による生息地の破壊、近畿地方の一部におけるチュウゴクオオサンショウウオとの競合・遺伝子汚染などにより、生息数は減少しています。日本では、天然記念物に指定されているため、食用の捕獲・採集は原則的に行われていませんが、密漁されている可能性もあります。

日本では1927年に各地の生息地が国の天然記念物に指定され、1951年には種として、1952年には特別天然記念物に指定されています。

環境省のレッドリストでは、絶滅危惧II類 (VU) に指定されています。

京都府の賀茂川では、食用として人為的に持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオが野生化しており、在来のオオサンショウウオとの交雑が問題になっています。近年の調査では、賀茂川で捕獲されたオオサンショウウオのうち、13%がチュウゴクオオサンショウウオ、44%が雑種であるという結果が出ています。

チュウゴクオオサンショウウオも、IUCNレッドリストの「絶滅寸前 (CR)」に指定されており、ワシントン条約附属書Iに記載、種の保存法の国際希少野生動植物種に指定されています。そのため、単純に外来種として駆除することができず、問題が複雑化しています。

「山椒魚」という名前の由来は、一説には山椒のような香りを発することによると言われています。平安時代以前からの古称に「はじかみいを」があり、これも「山椒（はじかみ）魚（いを）」を意味します。

「ハンザキ」という異名については、「体を半分に裂いても生きていそうな動物だから」「体が半分に裂けているような大きな口の動物だから」といった説がありますが、信頼できる古文献による裏付けは現在のところありません。その他、「ハジカミ > ハミザキ > ハンザキ」のように変化したとする説や、体表の模様が花柄のようにも見えることから「花咲き」から転訛したとする説もありますが、いずれも確証はありません。

オオサンショウウオは特別天然記念物であり、捕獲して食用にすることは禁じられていますが、指定を受けるまでは、貴重な蛋白源として食用としていた地域も多くありました。北大路魯山人の著作『魯山人味道』によると、調理の際に強い山椒の香りが家中に立ち込めたといい、魯山人はこれが山椒魚の語源ではないかと推測しています。最初は硬かったものの、数時間煮込むと柔らかくなり、香りも抜けて非常に美味しかったと記されています。

文化の中のオオサンショウウオ

井伏鱒二の短編小説『山椒魚』には、オオサンショウウオと思われる大型のサンショウウオが登場します。また、つげ義春も『山椒魚』という漫画作品を発表しており、こちらには明らかにオオサンショウウオが描かれています。

カレル・チャペックの『山椒魚戦争』は、オオサンショウウオが人類の敵となるSF小説です。この小説における山椒魚は、日本人を暗喩しているという見方もあります。

岡山県真庭市には、オオサンショウウオを祀る「はんざき大明神」という神社があります。

特撮テレビドラマ『ウルトラマンA』には、オオサンショウウオをモチーフにした「ハンザギラン」という怪獣が登場しました。

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