カンパチ

カンパチ：高級海水魚の魅力

カンパチ（学名：Seriola dumerili）は、スズキ目アジ科に属する大型の肉食魚です。この魚は世界中の暖かい海域に生息し、日本では特に食用として人気が高く、高級魚としての地位を誇ります。

形態

成魚のカンパチは通常、全長約1メートル前後に成長しますが、最大で190センチ、体重は80.6キログラムに達する個体も確認されています。全体的に長楕円形で体が側扁しており、目を通る黒褐色の帯模様は特に幼魚の時期に際立ちます。成魚になると、この帯模様はあまり目立たなくなります。体色は背面が黄褐色から淡紫色で、腹面が銀白色をしています。また、体側には黄色の縦帯が確認でき、尾ひれの下葉には白い色が付いています。

似た種のヒレナガカンパチ（S. rivoliana）としばしば混同されることがありますが、後者は第二背鰭と臀鰭の前端が長く、尾鰭の下葉に白い部分が無い点で区別が可能です。また、アフリカ西岸には同じアジ科のギニアン・アンバージャック（S. carpenteri）が生息していますが、その生態については未だ不明な部分が多いです。

生態

カンパチは地中海やメキシコ湾を含む熱帯および温帯の海域に幅広く分布しています。日本近海では、東北地方以南で見ることができます。彼らは最も成長する水温が20〜30度とされ、それ以下またはそれ以上の温度では成長が妨げられ、13度以下では死に至る可能性があります。日本では、春から夏に北上し、冬季には南下する移動パターンが見られます。

特に日本近海では、3月から8月が産卵期とされ、浮遊する卵を産む習性があります。近年の研究では、台湾近海での産卵が確認されています。孵化した仔魚は沖合の表層でプランクトン生活をし、稚魚になると流れ藻に依存して成長します。成魚は水深20〜70メートルの沿岸域で単独または群れをなして生活し、成長するに伴い小魚やイカ、エビなどを食べるようになります。

名称

「カンパチ」という名前は、東京での呼び名から派生しています。特に目の上の模様が「八」の字に見えることに由来します。日本各地では地方名が多く存在し、地域によって食材としての扱いや名前が異なるのが特徴です。例えば、関東では小型のカンパチを「ショッコ」、やや大きいものは「シオゴ」と呼ばれ、大きくなるにつれて「カンパチ」となります。また、稚魚は「モジャコ」として知られています。

利用

カンパチは釣りや定置網を利用した漁業で捕獲され、食材として広く利用されます。その肉質はしっかりとして脂肪も程よく乗っており、刺身や寿司、しゃぶしゃぶ、照り焼きなど様々な料理に利用されます。また、身を下ろした後には頭や骨を使ってアラ炊きにすることもあります。

ただし、熱帯地域に生息する大型のカンパチにはシガテラ毒が含まれるリスクがあるため、その点には注意が必要です。日本では、特に高級食材として取り扱われることが多く、漁獲量はブリやヒラマサに比べて少ないですが、その味わいは他の魚と比べても特に評判です。

養殖

カンパチは高級食材であるため、養殖も盛んに行われています。主な養殖地は鹿児島湾で、特に垂水市が出荷量日本一を誇っています。稚魚は自国内外からの供給があり、垂水市での養殖は品質が高いことで知られています。近年ではアニサキスの寄生が確認されており、養殖業者や加工業者は適切な処理を行うよう指導されています。

カンパチはその美味しさと高級感から、日本の食文化において特別な位置を占めている魚の一つといえるでしょう。

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