キチパチ

キチパチ（Citipati）

キチパチ（Citipati）は、サンスクリット語で「火葬の王」を意味し、白亜紀後期に現在のモンゴル地域に生息していたオヴィラプトル科に属する恐竜の一種です。この恐竜は特に巣の中で卵を抱く姿の化石が多数発見されており、保存状態が良好であるため、オヴィラプトル科の中でも特に有名です。キチパチは、モンゴルのゴビ砂漠に位置するウハートルゴドのジャドフタ層から発掘されました。日本語ではシチパチやキティパティ、シティパティといった異なる呼び名でも知られています。

特徴

最大のキチパチの個体はエミューと同じくらいの大きさで、体長は約3メートルにも達します。また、2007年にギガントラプトルが記載されるまでは、勇壮なオヴィラプトロサウルス類の中で最大の種とされていました。キチパチは、他のオヴィラプトロサウルス類と同様に、他の獣脚類よりも不思議な長い首と短い尾を持っています。

この恐竜の頭骨は短毛で含気化しており（つまり、穴が開いた構造）、くちばしは歯のない形状をしています。特に独特な特徴として、高いとさかを持つ点が挙げられます。このとさかは、タイプ種C. osmolskaeではあまり高くなく、前方の縁がくちばしに対してほぼ直角になっています。一方、未記載種ではより高いとさかを持ち、前方に切れ込みがあり、側面は四角い形状を示しています。

命名の由来

「キチパチ」という名称は、サンスクリット語の「citi」と「pati」から由来しています。「citi」は火葬のための焚き木を意味し、「pati」は王を示します。また、この名前の背後には、チベット仏教の伝説が存在しており、チティパティは二人の僧侶が泥棒によって斬首された神秘的な存在として語られています。

キチパチのタイプ種であるC. osmolskaeは、2001年に古生物学者のジェームス・M・クラークやマーク・ノレル、リンチェン・バルスボルドによって記載されました。この種名は、オヴィラプトロサウルス類やモンゴルの獣脚類について重要な研究を行ってきたハルツカ・オスモルスカに敬意を表する形で命名されたものです。

生態

キチパチは営巣行動が特徴的で、少なくとも4体の抱卵姿勢の標本が発見されています。1993年に発見された個体は「ビッグ・ママ」と呼ばれ、1995年に初めて確認された「ビッグ・オウンティ」という標本も有名です。これらの標本は、卵の上に位置し、対称に広げた四肢で巣を覆っている姿が描かれています。これらの発見は、キチパチの行動が現代の鳥類と類似していることを示唆しており、鳥類と獣脚類恐竜との深い関係を支持しています。

また、キチパチの卵は、細長い楕円形をしており、その構造が平胸類の卵に似ています。これらの卵は通常、巣の中で同心円状に並び、一腹の卵の数は約22個にも及びます。サイズは最大18cmで、オヴィラプトル科の中でも最大の卵を持つことが知られています。

皮肉なことに、オヴィラプトル科は最初に「卵泥棒」と名付けられた卵に関連する名前を持っていました。この名づけには誤解が含まれており、最初のオヴィラプトルの卵がプロトケラトプスの近くで発見されたことから、オヴィラプトルがその卵を狙ったとされていましたが、後にキチパチの胚が発見されることによって、真の誤りが修正されました。

結論

キチパチはそのユニークな特徴や生態から、多くの研究者に注目されています。特に営巣行動や卵に関する研究は、恐竜の生態や進化を理解する上で非常に重要とされています。キチパチは、恐竜の世界における鳥類との関係性を浮き彫りにし、古生物パズルの一部として今後も研究が進むことでしょう。

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