キャプテンシステム

キャプテンシステムとは

キャプテンシステム（CAPTAIN System）は、1980年代に日本電信電話公社（現NTTグループ）が運用していたビデオテックス通信網システムです。正式名称は「Character And Pattern Telephone Access Information Network System」で、電話回線を通じて情報センターと端末を接続し、利用者の要求に応じて文字や画像情報を表示・提供する双方向型の情報サービスでした。

システム開始の背景

1970年代後半、電電公社は電話回線の全国自動即時化を達成後、高度情報化社会の到来を見据え、画像通信やデジタル通信ネットワークなどの研究開発に取り組みました。その中で生まれたのがキャプテンシステムです。当時、キャプテンシステムは「ニューメディア」として注目され、高度情報通信社会の先駆けとなることが期待されました。

海外では、北米のNAPLPSやフランスのミニテルなど、同様のビデオテックスサービスが開発・実用化されており、キャプテンシステムはNAPLPSの仕様を参考に開発されました。

システムの概要

キャプテンシステムは、一般家庭のテレビをモニターとして利用するテレビアダプター型の専用端末「キャプメイト」を使用し、アナログ電話回線を通じて情報センターに接続します。情報センターには様々な情報が蓄積されており、利用者はこれらの情報を閲覧したり、双方向サービスを利用したりすることができました。

情報センターへの接続は、専用の電話番号（166）とセンター番号を入力することで行います。NTTが提供する全国キャプテン情報センターの番号は「36100」でした。画面の移動は、画面上に表示された番号と「#」を入力するか、「」と数桁の数字を入力することで行いました。

各地の第三セクターや自治体、企業などが情報提供会社を設立し、地域情報や生活情報、オンラインショッピング、チケット予約、掲示板などの多様なサービスを提供していました。これらの情報提供者は「インフォメーションプロバイダ（ISP）」と呼ばれました。

画面の解像度は248ドット×204ドットで、文字は15文字×8行または21文字×16行で表示でき、グラフィックは4×4ドット単位で16色中2色が指定できました。

キャプテンシステムには、楽譜情報をコード化して伝送する「MUSCOT」と呼ばれる音符符号化方式が採用されており、端末に搭載されたシンセサイザーで音楽を再生することもできました。この音楽再生機能は、1987年当時、他のビデオテックス規格にはないキャプテン独自の機能でした。

情報発信と利用料金

キャプテンシステムで情報発信を行うには、以下の3つの方法がありました。

1. キャプテン情報センターのディスクスペースを借りる
2. 自社で情報センターを設置し、キャプテン情報センターに接続する
3. 自社で情報センターを設置し、ビデオテックス通信網に直接接続する

情報発信には、専用の端末や編集機器が必要であり、初期費用が高額であったため、個人での情報発信は限定的でした。

キャプテンシステムの利用料金は、時間課金制で、全国一律3分30円でした。夜間や土日祝日は5分30円でした。また、有料情報サービスを利用する際には、別途情報料が必要でした。公衆端末は基本的に無料で利用できました。情報料の徴収はNTTが代行し、情報提供者に支払う仕組みでした。

サービスの盛衰

キャプテンシステムは1984年11月30日に首都圏と京阪神地域の一部で商用サービスを開始し、1987年3月末には全国で利用できるようになりました。しかし、情報提供内容の乏しさや専用端末、回線利用料の高さから利用者は伸び悩み、事業は低迷しました。

1996年9月にはNTTが中央集権型の情報センターの運用を終了し、2002年3月にはインターネットの普及による利用者減少のため、NTTコミュニケーションズがキャプテン事業から撤退しました。

システム構成

キャプテンシステムの主な構成要素は以下の通りです。

PT：加入者端末（キャプメイトなど）
LS：加入者交換機
TS：中継交換機
TGS：通信処理関門交換機
VCP：ビデオテックス通信網
DVCP：新ビデオテックス通信網
GW：ゲートウェイ
CAPF：キャプテン情報センター
DF：ダイレクトインフォメーションセンター
IF：インフォメーションセンター
IT：情報入力端末
ET：編集型入力端末

加入者端末は、電話回線を通じて通信処理関門交換機を経由し、ビデオテックス通信網に接続します。センター番号を入力することで、接続する情報センターを指定できます。

ビデオテックス通信網は、複数の地域に設置されており、中継回線で接続されています。これにより、加入者端末はどのビデオテックス通信網に接続されているかを意識する必要はありません。

キャプテン情報センターは、NTTが運営する情報センターで、情報提供者にディスクスペースを貸し出していました。ダイレクトインフォメーションセンターとインフォメーションセンターは、情報提供者が自ら設置するセンターですが、接続方法や提供サービスに違いがあります。

ローカルキャプテンシステム

ビデオテックス通信網を介さずに、電話回線のみを利用して情報センターに接続する方式もありました。この方式はローカルキャプテンシステムと呼ばれました。このシステムでは、代表電話番号を端末に入力して情報センターに接続しました。

キャプテンリサーチ

NTTビジュアル通信株式会社は、キャプテンシステムを利用した市場調査サービス「キャプテンリサーチ」を提供していました。調査対象者には端末を無償で提供し、接続料金も無料でした。

キャプテンシステムの影響

キャプテンシステムは、その後のインターネットの普及によってサービスを終了しましたが、現在のインターネットサービスに大きな影響を与えました。例えば、オーダーエントリーサービスは現在のオンラインショッピングと類似したサービスであり、情報料代行徴収は携帯電話のコンテンツ課金と同じ発想です。また、キャプテンシステムで培われた技術やノウハウは、後の情報通信技術の発展に貢献しました。

類似サービス

キャプテンシステムと同時期に運用されていた類似サービスとして、文字放送「モジネット」がありました。モジネットは放送波で情報を提供する一方通行型のサービスであり、キャプテンシステムとは双方向性において違いがありました。

サービス期間と主な情報センター

サービス開始：1984年11月30日
* サービス終了：2002年3月31日

当時、全国各地にキャプテンシステムの情報提供を行う運営会社（情報センター）が設立されました。

まとめ

キャプテンシステムは、1980年代の日本の情報化社会を牽引したシステムの一つです。技術的な限界や時代背景から普及には至りませんでしたが、その先進的な試みは、後のインターネットの発展に繋がる重要な役割を果たしました。

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