クルト・タンク

クルト・ヴァルデマー・タンクの生涯と業績

クルト・ヴァルデマー・タンク（1898年2月24日 - 1983年6月5日）は、ドイツの航空エンジニア及びテストパイロットとして多大な影響を与えた人物である。彼はフォッケウルフ社の設計部門を1931年から1945年まで指揮し、Fw 190戦闘機など、第二次世界大戦中に重要な航空機を設計した。

初期の経歴

タンクはプロイセンのブロンベルクで生まれた。17歳のときに第一次世界大戦に従軍し、騎兵として戦った。この時期、彼は飛行機への情熱を抱いていたものの、特殊部隊への転属を阻まれ、前線でも数学や物理の本を手放さず読んでいた。戦争から復員した後、彼はベルリン工業学校に入学。最初は電気工学を専攻するが、航空機の研究が禁止されていたため、航空工学を学ぶことができずにいた。しかし、大学4年生になってようやく飛行力学の講義が再開され、夢に向かって進むことができた。フライングクラブで自らグライダーを設計・製作し、小型機の操縦免許も取得したことで、航空機への熱意は一層高まることとなった。

フォッケウルフ社での業績

大学を卒業後、タンクはロールバッハ金属飛行機に入社し、そこで技術者としてのキャリアをスタートさせた。その後、BMWへ転職するも同社は倒産。これを機に1933年にはフォッケウルフ社で技術部長として採用される。彼はここで数々の名機を生み出すことになる。最初はFw 44「シュティークリッツ」やFw 56「シュテッサー」といった航空機を設計し、商業的成功を収めた。

特に、1936年に着手したFw 200「コンドル」は、大型高性能機として期待され、多くの注目を浴びた。タンクのリーダーシップのもと、Fw 200は1937年に初飛行を成功させ、その後の長距離飛行記録を打ち立てた。

Fw190とその後の戦争期

1939年から1945年にわたって製造されたFw190「ヴュルガー」は、ドイツ空軍の主力単座戦闘機となり、タンクの名声を高めることにつながった。彼の航空機設計への貢献により、1943年には名誉教授として名乗ることを許可された。タンクは自ら設計した機体に「Ta」という略号を付けることが認められる。

戦争中、タンクは新たな高々度戦闘機「Ta 152」の開発にも取り組んだ。試乗の際には、当時のアメリカ軍の戦闘機と遭遇した経験もある。彼は質の高い設計と実践的な経験を融合させ、戦闘機の質を向上させていった。

戦後のキャリアと影響

戦後、クルト・タンクは多くのドイツ技術者と同様にラテンアメリカに移り、アルゼンチンの航空技術研究所での仕事を引き受けることになる。ここではジェット戦闘機IAe プルキ IIの設計に携わり、高性能を誇る機体を開発したが、経済危機や技術的問題により開発は頓挫することとなった。その後、インドに渡り最初の軍用機HF-24マルートを設計。これは当時の技術を駆使した機体で、タンクの技術力を示す絶好の例である。

最後の年

1970年代にタンクはベルリンに戻り、その後の人生を過ごした。1983年に85歳で亡くなるまで、彼の業績と影響は航空工学の分野で今も語り継がれている。彼は数々の航空機を設計した革新者として、航空史に自らの名を刻んだのである。

もう一度検索