クレムリ

クレムリとは



「クレムリ（кремль）」はロシア語で「要塞」や「城塞」を意味する言葉です。この用語は1317年の年代記に初めて登場し、古スラヴ語の「縁」や「柵」を示す語根から派生していると言われています。「クレムリン」という表現も一般的ですが、ロシア語から見ると正確ではありません。

様々なクレムリ



ロシア国内の歴史的都市には、城壁や塔で囲まれたクレムリが点在しています。これらの要塞は通常、川や湖などの自然障害物に近い丘の上に建設されており、防衛のための武器庫をはじめ、大聖堂や宮殿、行政機関などさまざまな施設が含まれていました。市民の生活の中心はクレムリの外にある市場町（ポサード）に広がり、時には市全体を囲む城壁も存在しました。

特徴的なのは、現在「クレムリ」と呼ばれるいくつかの建物が、元々は城塞ではなく軍の前哨基地として設けられたことです。たとえば、シュリッセリブルクやイヴァンゴロドなどは、もともと国境を守るために設立された前哨です。また、要塞化された修道院もクレムリと称され、ヤロスラヴリやソロヴェツキー修道院などがその例です。

特に「クレムリン」と言えば、モスクワのクレムリを指すことが一般的です。モスクワのクレムリはモスクワ川に面し、歴代の君主によって宮殿や聖堂が増築され、長い歴史を持っています。かつてはソ連の中心地でもあり、現在のロシア大統領府が位置しています。

クレムリの歴史



中世初期には、ルーシの都市は水源近くに築かれていました。これらの町は、濠や木造の防壁によって守られ、街並みや聖堂も木造で作られていました。これらの木造の砦はスラヴ諸国やスカンディナヴィアの伝統的なものでしたが、13世紀頃には石造の城塞も見られるようになりました。古くは「デティネツ」という言葉が用いられていましたが、次第に「クレムリ」という表現が主流になりました。

モンゴル帝国の襲来によって、ロシア南部や東部の都市が壊滅的な打撃を受け、木造や石造の城塞も破壊されました。その後、ロシア各地のクレムリはモンゴルやタタールとの戦いを経て更に発展していきました。特に西方からのリトアニアやポーランドによる襲撃を受けた地域では、多数の前哨が築かれ、迅速な防衛が求められました。このため、木造のクレムリも新たに建設されるようになりましたが、後に石やレンガで強化されていきました。

17世紀から18世紀にかけてクレムリの建設が続きましたが、その後は軍事的な役割が薄れるとともに、新古典主義スタイルによる都市改造が進み、多くのクレムリが撤去されました。

クレムリの一覧



以下は、世界遺産として登録されている主なクレムリのリストです。

また、現存するクレムリや廃墟となったもの、さらには城壁がないクレムリも多数存在します。これらの建物群は、ロシアの歴史を今に伝える重要な遺産といえるでしょう。

クレムリは地域ごとに異なった文化的な特色を持ち、多くの歴史的な物語を秘めています。

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