ケタミン

ケタミン（Ketamine）

概要

ケタミンはアリルシクロヘキシルアミン系の解離性麻酔薬です。日本では「ケタラール」という商品名で、静脈注射や筋肉注射薬として用いられています。これらの形式は処方箋医薬品および劇薬に分類されています。ケタミンは、一般的な麻酔薬に比べて低用量での使用時に呼吸抑制のリスクが低いという特長を持っています。結果として、WHO（世界保健機関）の必須医薬品リストにも載っている重要な薬剤です。

歴史的背景

1962年、アメリカのパーク・デービス社によって、フェンサイクリジン（PCP）の代用として合成されました。1963年にPCPが麻酔薬として承認されましたが、覚醒時に妄想などの副作用が懸念され、その使用は中止されました。その後、1969年に副作用が少ないケタミンが承認され、多岐にわたる使用例が広がりました。特に、子供への麻酔や動物の麻酔でも活用されています。

化学特性

ケタミンは常温常圧下で白い粉末の形状を持ちます。その融点は314.74度で、特にギ酸や水に溶けやすいですが、無水酢酸やジエチルエーテルにはほとんど溶けません。この物質は、注射用薬として塩酸塩水溶液形式で提供され、pHは3.5から5.5の範囲です。

薬理学

ケタミンはNMDA型グルタミン酸受容体に対して拮抗作用を示し、興奮性神経伝達を抑制します。これは、心臓や呼吸器への影響が少ないため、特に手術中の使用に優れた特性を発揮します。また、投与後に催眠状態を引き起こし、鎮痛効果が得られるほか、神経保護作用も報告されています。

医療用途

麻酔・鎮痛

ケタミンは麻酔薬としての用途において、1-2mg/kgの用量で使用されます。他の麻酔薬とは異なり、血圧を上昇させつつ、呼吸抑制作用が少ないため、動物用麻酔や急性治療時に重宝されています。この特性から、ケタミンは特に中枢神経系の麻酔においても活用されています。

抗うつ作用

特筆すべきは、ケタミンの抗うつ効果です。治療抵抗性うつ病に対しては、投与から2時間で効果が見られ、その効果は長期間持続することが示されています。うつ病治療における他の薬剤の効果が数週間かかるのに対し、ケタミンは急速な反応があるため、注目を集めています。最近では、エスケタミンというケタミンの異性体も重要視され、点鼻スプレーの形でうつ病治療に承認されています。

乱用のリスク

ケタミンは乱用のリスクも伴っています。特に、混合剤として用いられ、「K」や「スペシャルK」といった隠語で呼ばれることが多いです。幻覚作用があるため、ユーザーによっては依存性を引き起こすこともあります。

副作用

使用に際しては、頭痛や目眩、解離感などの副作用が報告されており、その影響は一時的に表れることが多いです。また、過剰投与の場合にはおおっぴらな呼吸抑制が生じることがあるため、使用には診療体制を整えておく必要があります。

結論

ケタミンはその特異な特性と幅広い医療効果により、多くの場面での利用が期待されていますが、乱用や副作用のリスクも考慮しなければなりません。今後、更なる研究や臨床試験が期待されている重要な薬剤です。

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