ケブカサイ

ケブカサイ (Coelodonta antiquitatis)

ケブカサイは、更新世後期にユーラシア大陸北部に生息していた大型のサイの一種です。マンモスやオオツノシカと共に、氷河期を象徴する動物として広く知られています。学名の Coelodonta antiquitatis は、「中空の歯」という意味を持っています。

概要

ケブカサイは、頭胴長が約4メートル、体重は3～4トンに達したと考えられています。その最大の特徴は、鼻の上に生えた2本の角です。特に前方の角は非常に長く、老齢のオスの中には1メートルを超えるものも存在しました。ケブカサイの姿は、旧石器時代の洞窟壁画にも描かれており、当時の人々にとって身近な存在であったことが伺えます。

ケブカサイは、イギリスからシベリア東部にかけての広範囲に生息し、主にツンドラ地帯に適応していました。寒冷な気候に適応するため、厚い毛皮に覆われ、熱の損失を防ぐために耳は小さくなっていました。また、ツンドラに生える硬い草を食べるために、頬の歯は高冠歯化していました。これにより、硬い植物を効率的に咀嚼することが可能になっていました。

同時期にシベリアなどに生息していたマンモスとは異なり、ケブカサイの化石は北アメリカ大陸からは発見されていません。このことから、ケブカサイはマンモスとは異なり、ベーリング地峡を渡る機会がなかったと考えられています。その理由は定かではありませんが、食性の違いや、より寒冷な環境への適応などが影響した可能性が指摘されています。

シベリア北東部では、約3万年前に進出してきた人間と数千年間共生していました。しかし、最終氷期の終わり頃に個体数が激減し、絶滅に至りました。絶滅の原因としては、気候変動による生息地の変化、人間の狩猟圧、またはこれらの複合的な要因が考えられています。

関連

マンモス

ケブカサイとマンモスは、同じ地域から化石が発見されることが多く、両者が混生していたと考えられています。共に氷河期の環境に適応した大型哺乳類として、生態系において重要な役割を果たしていました。

エラスモテリウム

エラスモテリウムは、ケブカサイと同時代に生きていたサイの仲間です。額に巨大な1本の角を持つことが特徴で、ケブカサイとは異なる生態的地位を占めていたと考えられています。

参考文献

冨田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年。ISBN 4-621-04943-7
ヘーゼル・リチャードソン、デイビッド・ノーマン（監修）『恐竜博物図鑑』出田興生（訳）、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7

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