サミュエル・トラウトマン

サミュエル・トラウトマン大佐：『ランボー』シリーズの重鎮

サミュエル・“サム”・トラウトマンは、アメリカを代表するアクション映画『ランボー』シリーズに登場する重要なキャラクターです。アメリカ陸軍の大佐であり、主人公ジョン・ランボーのかつての上官として、彼の人物形成に大きな影響を与えました。映画ではリチャード・クレンナが演じ、その存在感はシリーズを通して際立っています。

キャストと制作秘話

トラウトマン大佐を演じたリチャード・クレンナは、その重厚な演技で観客を魅了しました。しかし、当初はカーク・ダグラスがこの役を演じる予定でした。ダグラスは原作の結末にこだわり、脚本の変更を求めた結果、プロデューサーとの意見の相違により降板。ダグラスが軍服姿でトラウトマンを演じた宣伝写真やポスターが残されており、その幻の姿は今も語り草となっています。クレンナは2003年に亡くなったため、2008年公開の『ランボー/最後の戦場|ランボー_最後の戦場』では、過去の出演シーンを編集した回想シーンでの登場となりました。

人物像と経歴

トラウトマン大佐は、フォート・ブラッグ駐屯地に勤務する将校で、ベトナム戦争中はアメリカ陸軍特殊部隊群（グリーンベレー）の部隊指揮官として活躍しました。シリーズを通して、その所属は変遷し、第1作では第5特殊部隊グループ、第2作以降ではデルタフォースのベレーフラッシュを着用しています。ベトナム戦争後はペンタゴンでの仕事が多くなったと語っていますが、第3作では単独でパキスタン＝アフガン国境付近に潜入し、ムジャヒディンの訓練任務を遂行しました。

彼の風貌は、「長身痩躯で、鱒（Trout）というよりはイタチに似た顔」と表現されることもあります。年齢は第2作当時で50歳とされ、人生のほぼ半分を軍隊生活に費やしたとされています。卓越した軍事能力を持ち、第3作ではランボーと共にソ連軍と戦いました。ランボーにとってトラウトマンは、単なる上官ではなく、3年間共に戦った戦友であり、父親に近い理解者でした。トラウトマンもまた、ランボーを「自分の最高の作品」と語り、部下を息子のように思っていました。

常にアメリカ政府の意志を代弁する立場でありながら、トラウトマンの心情は前線の兵士に近く、政府高官と対立することも少なくありません。ランボーの言葉に理解を示し、彼の心情を尊重する姿勢は、多くの観客の共感を呼びました。

勲章と軍歴

トラウトマン大佐の軍歴は、彼の制服に取り付けられた勲章からも伺えます。その勲章は以下の通りです。

銀星章
銅星章
防衛功労賞
ベトナム共和国国家勲章（オフィシエ級）
ベトナム共和国戦功勲章
名誉戦傷章
功績賞
アメリカ防衛従軍記章
国連従軍記章
陸軍殊勲章（2回）
陸軍善行章
国土防衛従軍章
朝鮮戦争従軍記章
ベトナム戦争従軍記章（2回）
レジオン・オブ・メリット
ベトナム共和国椰子葉付武勇十字章
ベトナム戦争記念章
歩兵特級射手記章
落下傘記章
殊勲部隊章
韓国殊勲部隊章
ベトナム共和国殊勲部隊章
ベトナム共和国椰子葉付武勇十字章部隊章

これらの勲章は、彼の輝かしい軍歴と数々の功績を物語っています。

各作品での活躍

映画第1作「ランボー」：ランボーを説得するために派遣され、彼の心情を理解しようとするものの、保安官ティーズルとの対立が描かれています。ランボーを「自分の最高傑作」と語り、最後には投降を促します。
映画第2作「ランボー/怒りの脱出|ランボー_怒りの脱出」：ランボーに特赦を与える代わりに極秘作戦への参加を提案します。しかし、CIAエージェントのマードックの裏切りにより、ランボーが窮地に陥る原因を作ってしまいます。
映画第3作「ランボー3/怒りのアフガン|ランボー3_怒りのアフガン」：ムジャヒディンを支援するためにアフガニスタンに潜入し、ソ連軍に捕らえられますが、ランボーに救出され共に戦います。
* 映画第4作「ランボー/最後の戦場|ランボー_最後の戦場」：ランボーの悪夢の中にのみ登場し、過去の映像が使用されています。

原作小説とアニメでの描かれ方

原作小説『一人だけの軍隊』では、トラウトマンはグリーンベレー教育スクールの校長であり、ランボーとは直接的な面識はありません。ランボーを射殺する結末も、映画とは大きく異なります。アニメ版『Rambo and the Forces of Freedom』では、ランボーの指揮官としてだけでなく、彼自身もランボーと共に戦います。

大衆文化への影響

トラウトマン大佐は、そのキャラクターが多くの作品に影響を与えています。コメディ映画『ホット・ショット2』では、クレンナ自身がトラウトマンのパロディであるデントン・ウォルターズ大佐を演じました。
また、『メタルギア』シリーズのロイ・キャンベル大佐、『ザ・キング・オブ・ファイターズ』シリーズのハイデルン、『コマンドー』のフランクリン・カービー将軍など、多くのキャラクターがトラウトマンへのオマージュとして誕生しています。ゲーム『World of Warcraft』にも、Colonel Trotemanというキャラクターが登場しています。


サミュエル・トラウトマン大佐は、『ランボー』シリーズに欠かせない重要なキャラクターであり、その存在は今もなお多くのファンを魅了し続けています。

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