スパルタの海

スパルタの海：戸塚ヨットスクールを題材とした問題作

『スパルタの海』は、戸塚ヨットスクールを題材にしたノンフィクション作品であり、後に映画化もされました。この作品は、中日新聞文化部の企画で、ノンフィクション作家の上之郷利昭がスクールに泊まり込み取材し、中日新聞と東京新聞に連載した記事が元になっています。単行本は1982年に東京新聞出版局から刊行されました。

作品の概要

『スパルタの海』は、家庭内暴力や登校拒否に苦しむ子供たちが、戸塚ヨットスクールで立ち直っていく過程を描いています。しかし、スクールでは既に死亡事故が発生しており、その一件に関して名古屋地方裁判所が不起訴処分とした1981年末までの状況が描かれています。作品では、生徒やその家族は一部を除き仮名で登場します。

新聞連載時には、育児に悩む読者から子供を入校させたいという希望が殺到し、スクールのPR本ではないかとの批判も受けました。

映画化とその顛末

1983年には、上之郷の原作を基に、伊東四朗主演、西河克己監督で映画が製作されました。しかし、映画完成後、戸塚宏校長が逮捕されるという事態が発生し、公開は中止となり、お蔵入りとなってしまいました。その後、有志による上映を経て、制作から28年後の2011年にようやく全国で劇場公開されました。

映画のキャスト

映画では、伊東四朗が戸塚ヨットスクールの戸塚宏校長を演じました。その他のキャストとして、山本みどりがコーチの水谷恒子役、塩屋智章がコーチの山内孝伸役、粟津號がコーチの工藤忠夫役、清水宏が副校長の川西照光役、辻野幸一が家庭内暴力に苦しむ高校生の松本俊平役、横田ひとみが同じく家庭内暴力に苦しむ沢明子役などを演じています。

作品の評価とその後

映画評論家の山根貞男は、この作品を「活劇としての素晴らしさに目を瞠った」、「清々しい青春映画」と評価しました。しかし、キネマ旬報では評価が分かれ、5つ星満点中4つ星をつける人もいれば、1つ星をつける人もいました。

制作から長らく封印されていたこの作品ですが、戸塚ヨットスクールを支援する会が著作権を取得し、2011年に劇場公開されました。また、2014年には衛星劇場でテレビ初放映もされています。

作品が提起する問題

『スパルタの海』は、戸塚ヨットスクールという特異な環境を通して、現代社会における教育や家庭の問題を提起しています。体罰や過激な指導方法に対する賛否両論がある一方で、スクールで立ち直っていく子供たちの姿は、多くの人々に感動を与えました。この作品は、私たちに「教育とは何か」「子供たちの成長とは何か」を深く考えさせるきっかけとなるでしょう。

関連作品として、戸塚ヨットスクールの30年を追った記録映画『平成ジレンマ 戸塚ヨットスクールの30年 そして、現在』もあります。

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