セギサウルス

セギサウルス：ツェギキャニオンの謎めいた小型恐竜

セギサウルス(Segisaurus)は、約1億8300万年前のジュラ紀前期に生息していた小型の獣脚類恐竜です。学名は「ツェギキャニオンのトカゲ」を意味し、その名の通り、アメリカ合衆国アリゾナ州にあるツェギキャニオンのナヴァホ砂岩層で発見された化石に基づいて命名されました。現在、この地域で発見されている唯一の恐竜であり、その希少性も相まって、古生物学において大きな注目を集めています。

セギサウルスの特徴

セギサウルスの大きさは、およそガチョウ程度と推定されています。体長は約1メートル、尾の長さは約50センチメートル、体重は4～7キログラムと比較的軽量な恐竜でした。二足歩行で、細長く柔軟な首と、鳥類のような体型をしていたと考えられています。3本の指を持つ強靭な脚を持ち、体の割に長い脚と尾、そして前肢が特徴的です。

特に注目すべき点は、鎖骨の存在です。鎖骨は多くの獣脚類では見られない特徴であり、セギサウルスに見られる鎖骨は、恐竜と鳥類の進化における類縁関係を示唆する重要な証拠となっています。また、他の同時代の恐竜では発見されていない鎖骨を持つ点も、セギサウルスを特異なものにしています。

食性については、昆虫食であった可能性が高いとされています。しかし、腐肉食性であった可能性も指摘されており、その食性は未だに研究の余地があります。

セギサウルスの化石は、亜成体の標本しか発見されておらず、成体となるとどのくらいの大きさになるのかは不明です。チャールズ・ルイス・キャンプは、セギサウルスの肋骨がトビトカゲのような飛膜を支えていた可能性を指摘しており、敏捷な動きをしていた可能性が示唆されています。

セギサウルスの分類と発見の歴史

セギサウルスは、1936年にチャールズ・ルイス・キャンプによって記載されました。記載された標本は、断片的な骨格で、頭部などの重要な部位は発見されていませんでした。発見からしばらくの間は注目されていませんでしたが、2005年の再調査により、骨が中空であること、そしてコエロフィシス上科、特にプロコンプソグナトゥスに近縁であることが明らかになりました。

セギサウルスの化石は、1933年にナヴァホ族のMax Littlesalt氏によって発見されました。化石は石灰質の砂岩の中に保存されており、ジュラ紀前期のプリンスバッキアンからトアルシアンの地層から産出しています。Littlesalt氏が渓谷で家畜の飼育中に発見し、調査を行っていた考古学者に報告されたことが、この貴重な発見につながりました。発見後、新たなセギサウルスの化石は発見されていません。

初期の研究では、セギサウルスの骨格が「中身の詰まった」緻密な構造をしているとされていました。しかし、最近の研究により、実際は中空の骨を持つことが確認され、この発見はセギサウルスの分類学的理解を大きく前進させました。

セギサウルスの識別とタフォノミー

セギサウルスは、以下の特徴によって他の恐竜と区別できます。

胴椎の椎体が腹側であまり狭窄されていない
肩甲骨が細い
上腕骨の骨幹がコエロフィシスのものより強くねじれている
広い坐骨窓がある
* 上腕骨の三角-胸筋稜が長方形である

セギサウルスのホロタイプ標本は、砂岩の層の中で発見されました。このことから、セギサウルスは砂に埋もれて死亡したと考えられています。ただし、巣穴の痕跡などは発見されておらず、これはあくまで推測の域を出ません。ナヴァホ砂岩層の地質学的特徴から、セギサウルスは、現在の砂丘のような環境に生息していた可能性が示唆されています。

まとめ

セギサウルスは、その希少性とユニークな特徴から、恐竜進化研究において重要な位置を占める恐竜です。今後の研究により、その生態や進化史に関するさらなる知見が得られることが期待されます。 謎多きセギサウルスの研究は、これからも古生物学者の興味を惹きつけ続けるでしょう。

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