ハッカソン

ハッカソンとは

ハッカソン（hackathon）とは、ソフトウェア開発分野のプログラマー、グラフィックデザイナー、UI/UXデザイナー、プロジェクトマネージャーなどが集まり、集中的にソフトウェア関連プロジェクトに取り組むイベントです。個人、チーム、全体など様々な形式で、時にはハードウェアを扱うこともあります。期間は1日から1週間程度で、教育目的や社会貢献、エンジニア採用、社内イノベーションなど、多様な目的で開催されます。ソフトウェア開発や改善を目標とし、特定のプログラミング言語、OS、API、テーマ、人数などが定められることもあります。ハックデイ、ハックフェスト、データソン、コードフェストなどの別名があります。

歴史

ハッカソンという言葉は、「ハック(hack)」と「[マラソン]」を組み合わせた造語で、1999年頃にOpenBSDの開発者やサン・マイクロシステムズのマーケティングチームがそれぞれ独自に考案したとされています。

OpenBSDが初めて使用したのは1999年6月4日、カルガリーで開催された暗号開発イベントで、アメリカの輸出規制を回避するため、10人の開発者が参加しました。

サン・マイクロシステムズは、1999年6月15日から19日まで開催されたJavaOneカンファレンスで、ジョン・ゲージ氏が参加者にPalm Vを使ってJavaでプログラムを作成するイベントを「ザ・ハッカソン」と名付けました。

2000年代中盤から後半にかけて、ハッカソンは企業やベンチャーキャピタルから注目されるようになり、技術革新や投資の場として普及しました。GroupMeは、2010年のTechCrunch Disrupt NYCのハッカソンから誕生し、2011年にSkypeから多額の出資を受けました。

ハッカソンの流れ

ハッカソンは、テーマに関するプレゼンテーションから始まり、参加者は個々の関心やスキルに基づき、アイデア出しやチーム結成を行います。その後、数時間から数日間かけて開発作業を行い、ピザや栄養ドリンクで軽食を済ませ、寝袋などで仮眠をとることもあります。

最終的には、チームごとに成果物をデモンストレーションし、審査員が優勝チームを選出したり、賞を授与したりします。審査員は、スポンサーや団体の関係者で構成されることが多いです。開発コミュニティ運営のハッカソンでは、同業者による審査が行われます。高額賞金が出る場合もありますが、既存ソフトウェアの改善を目的としたコンテスト要素のないハッカソンもあります。このようなイベントは「スプリント」や「コードスプリント」と呼ばれることもあります。

ハッカソンの種類

ハッカソンは、特定のプラットフォーム、プログラミング言語、API、テーマ、年齢層などを限定して開催されることがあります。

特定のプラットフォーム向け

モバイルアプリ、デスクトップOS、Webプログラミングなど、特定のプラットフォームに焦点を当てたハッカソンがあります。例えば、モバイルアプリ開発に特化したOver the Airや、ゲーム開発に特化したハッカソンなどがあります。音楽関連のソフトウェアやハードウェアを開発するMusic Hack Dayは、世界中で人気のあるイベントです。また、OpenBSDを使ったハッカソンは、ハッカソンという言葉の起源にもなっています。

特定のプログラミング言語、API、フレームワークを使用

特定のプログラミング言語（Perl、Haskell、Scalaなど）やフレームワーク（HTML5、Ruby on Railsなど）の使用を目的としたハッカソンがあります。また、企業が提供するAPIを利用したアプリケーション開発を目的としたハッカソンも多く、Yahoo!、Google、Foursquareなどが開催しています。

特定の目的

政府の改善、都市交通システムの改善、教育の改善などを目的としたハッカソンがあります。防災や危機対応を目的としたRandom Hacks of Kindnessのようなハッカソンもあります。

年齢などを限定

ティーンエイジャー、大学生、女性に限定したプログラマーが参加できるハッカソンもあります。日本では、大学生向けの宿泊型ハッカソンとして関西ビギナーズハッカソンがあります。

企業内ハッカソン

FacebookやGoogleなど、企業内でも新製品開発のためにハッカソンが開催されています。Facebookの「いいね！」ボタンも、ハッカソンから生まれたアイデアです。

一般のハッカソン

参加者や内容に制限を設けず、ソフトウェアの迅速な開発を競うハッカソンもあります。SAPO Codebitsなどが例として挙げられます。

産学連携ハッカソン

大学と企業が連携してハッカソンを開催する例も増えており、東京工科大学、金沢工業大学、立教大学、大阪大学などが開催しています。

ハードウェアハッカソン

メイカーズムーブメントの流れを受け、ハードウェア分野のハッカソンも行われるようになり、メイカソンとも呼ばれています。GUGENハッカソンなどがあります。

アートハッカソン

芸術と技術を融合させた作品制作を目的としたハッカソンで、3331α Art Hack Dayなどがあります。

音楽ハッカソン

音楽関連のアプリケーション開発を行うMusic Hack Dayは、世界中で開催されています。

化学ハッカソン

理化学研究所計算科学研究機構では、量子化学分野のハッカソンが開催されています。

自動車ハッカソン

自動車分野でも、フォードやトヨタなどがハッカソンを開催しています。

ヘルスケアハッカソン

医療や健康に関する課題をテーマにしたハッカソンで、製薬会社なども協賛しています。

自転車ハッカソン

自転車に関するハッカソンイベントも、世界中で開催されています。

オープンデータハッカソン

官庁が公開したオープンデータを活用したハッカソンも行われています。

金融ハッカソン

フィンテック関連のハッカソンも開催されています。

バイオハッカソン

生命科学系データベースの利用や公開を目的としたバイオハッカソンが、2008年から毎年開催されています。

ハッカソンプラットフォーム

CraftStadium（日本）、unstop（インド）、Devpost（アメリカ）など、ハッカソンを支援するプラットフォームも存在します。

各国におけるハッカソン

日本

日本では、IT企業だけでなく、異分野の企業もハッカソンに取り組む独自の流れがあります。米Evernoteが、トヨタICT、ぐるなび、じゃらんなどと共催したハッカソンが、この流れを作ったと言われています。また、大阪市が開催した「ものアプリハッカソン」から生まれたベンチャー企業Moffは、クラウドファンディングで成功を収めました。パナソニックやシャープもハッカソンを開催し、伊藤園アメリカ法人はお茶のアイデアを出す「茶ッカソン」を開催しました。

オープンイノベーションとしてのハッカソン

ハッカソンは、企業が外部のアイデアを取り込み、新しい発想を得るためのオープンイノベーションの手法としても注目されています。さくらハッカソンのように、ソーシャルイノベーションを目的としたハッカソンも多いです。

ソーシャルイノベーションとしてのハッカソン

ハッカソンは、社会問題の解決を目的として、社会起業家の視点を交えて行われることも多いです。医療、環境問題など、社会問題の解決自体がビジネステーマとなっています。地域課題の解決を目的とする場合でも、多くは都市部で開催されており、地方でのイノベーションハブとして、Twitterやテレビ電話を活用する試みもあります。

大企業におけるハッカソンの取り組み

大企業では、オープンイノベーションへの関心は高いものの、ハッカソンの認知度は低いのが現状です。

フューチャーセンターとの融合

ハッカソンでは、ブレインストーミングに加えて、フューチャーセッションの手法を取り入れることもあります。