ハートリー

ハートリーエネルギー（Hartree energy）は、原子や電子のスケールを扱う物理学分野、特に量子論、原子物理学、量子化学において、エネルギーの単位として用いられる物理定数です。この単位は、原子単位系という特殊な単位系の中で定義され、その名称は英国の数理物理学者ダグラス・ハートリーに由来します。

ハートリーエネルギーは通常、記号Ehで表され、その値はSI単位であるジュール（J）で表すと、約4.3597447222071×10⁻¹⁸ J（2022 CODATA推奨値）となります。また、電子ボルト（eV）で表すと、約27.211386245988 eV（2022 CODATA推奨値）となります。

定義

ハートリーエネルギーは、ボーア半径（a₀）に等しい距離にある、電気素量（e）に等しい電気量を持つ二つの粒子の静電エネルギーとして定義されます。このエネルギーは、以下の式で表されます。


Eh = e² / (4πε₀a₀)


ここで、ħ（エイチバー）はプランク定数（ディラック定数）、cは真空中の光速度、Z₀は真空における特性インピーダンス、αは微細構造定数です。

国際量体系（ISQ）においては、電気定数ε₀を用いてZ₀ = 1/ε₀cと表せるため、ハートリーエネルギーは以下のようになります。


Eh = (ħcα) / (2a₀)


ガウス単位系では、Z₀ = 4π/cとして計算されるため、ハートリーエネルギーは以下のようになります。


Eh = (e²)/(a₀)


ハートリーエネルギーは、ハートリー原子単位系におけるエネルギーの基本単位であり、1 hartree = 1 a.u.（原子単位）と定義されます。

他の単位との関係

物質量あたりで表すと、ハートリーエネルギーは以下のようになります。


1 hartree = 2625.500 kJ/mol
1 hartree = 627.509 kcal/mol

応用

ハートリーエネルギーは、量子化学計算や原子物理学におけるエネルギーのスケールを理解する上で重要な役割を果たします。例えば、原子や分子の電子状態のエネルギーを計算する際に、この単位が頻繁に使用されます。

まとめ

ハートリーエネルギーは、原子レベルのエネルギーを扱う上で不可欠な単位であり、理論的な計算や実験結果の解釈に広く用いられています。この単位を理解することで、量子論や原子物理学の分野における様々な現象をより深く理解することができます。

関連項目

単位系
原子単位系

外部リンク

CODATA Value: Hartree energy
CODATA Value: Hartree energy in eV
* IUPAC Gold Book - Hartree energy

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