フルーティアふくしま

「フルーティアふくしま」は、東日本旅客鉄道（JR東日本）がかつて運行していた、特別なコンセプトを持つ観光列車です。福島県の豊かな自然と果物をテーマに掲げた「走るカフェ」として親しまれ、「のってたのしい列車」シリーズの一員として多くの旅人に利用されましたが、専用車両の引退に伴い2023年末をもって運行を終えました。

概要

この列車は、2015年に開催された福島デスティネーションキャンペーンに合わせて同年4月25日にデビューしました。運行開始当初は磐越西線の郡山駅と会津若松駅の間で、定期列車に併結する形で1日に2往復運行されていました。

最大の特徴は、「走るカフェ」というコンセプトです。車内では、福島県産の旬のフルーツをふんだんに使用したオリジナルスイーツが提供されました。地元の有名店「fruits peaks」がプロデュースした特製スイーツ2品に加え、温かいコーヒー1杯と福島県産フルーツを使ったジュース1本がセットになった「スイーツセット」が中心サービスでした。さらに、アイスティーとアイスコーヒーはおかわり自由で、車窓を流れる景色と共に優雅なカフェタイムを満喫できました。

列車名および専用車両の愛称の一部となっている「フルーティア（FruiTea）」という言葉は、果物を意味する「Fruit」と、カフェコンセプトの中心であるお茶を意味する「Tea」を組み合わせた造語であり、そのコンセプトを端的に表しています。

長年運行を続けてきたこの列車は、使用車両の老朽化に伴い、2023年12月24日の運行をもってその歴史に幕を閉じました。その後、2024年 4月6日からは新たな観光列車「SATONO」（HB-E300系気動車を使用）が福島県を巡る観光列車としての役割を引き継いでいます。

運行概況

運行開始当初は定期列車への併結でしたが、2019年以降は「フルーティア」単独での運行となりました。運行区間は季節によって異なり、例年春季から秋季にかけては主に磐越西線の郡山駅から喜多方駅の間を1日2往復、冬季には東北本線の郡山駅から仙台駅の間を1日1往復運行していました。また、これらの定期運行区間以外にも、臨時団体列車として東北本線や常磐線、その他の路線で運行されることもありました。

列車種別としては「快速」を名乗っていましたが、一般的な乗車券では利用できず、全ての座席がびゅうオンラインでの旅行商品としてのみ販売されていました。

主な停車駅は以下の通りです。

磐越西線: 郡山駅、磐梯熱海駅、猪苗代駅、会津若松駅、喜多方駅
東北本線: 郡山駅、福島駅、仙台駅

使用車両

「フルーティアふくしま」の専用車両「フルーティア」は、JR東日本の近郊型電車719系0番台（H-27編成）を種車として、2014年に郡山総合車両センターで大がかりな改造を受けて誕生した700番台（S-27編成）です。

車体デザインは、福島県の城下町の象徴である赤瓦や黒漆喰壁、そして明治・大正時代のモダンな建築様式が織りなす独特な街並みと、周辺の雄大な自然との調和を表現した美しい塗装に変更されました。種車は3箇所に客用扉がありましたが、運転席寄りの1箇所を残して他の扉は塞がれ、客室空間が拡張されました。また、冬場の雪の侵入を防ぐための対策も施されています。パンタグラフも従来の菱形からシングルアーム式に交換され、外観のイメージが一新されました。

車内設備

車内は前述の通り全席指定で、座席定員は36名と少人数制でした。内装デザインは、明治・大正時代の近代建築が持つ洗練された雰囲気と、会津漆器の豊かな質感をイメージした、落ち着きと品格のある空間が創り出されていました。連結面の貫通扉は自動化されています。

1号車（クシ718-701）はカフェカウンターが中心となる車両でした。車体左側に配されたカフェカウンターは、優雅な雰囲気を演出する人工大理石の天板を備え、6席のカウンター席が設けられていました。旅の途中で温かい飲み物やスイーツを受け取る際のサービス拠点であり、カウンターに座って景色を楽しむこともできました。車端部のトイレは温水洗浄便座付きの快適な洋式に改修され、別にパウダールームも新設されるなど、女性や身だしなみを整えたい乗客への配慮が見られました。この車両の車内照明には、落ち着いた雰囲気を醸し出す間接照明やダウンライトが採用されていました。

2号車（クモハ719-701）は、ゆったりと過ごせる座席が配置された車両でした。4人掛けのボックスシートが6組、2人掛けのボックスシートが4組、そして1人掛けのシートが4席設置されており、多様な旅のスタイルに対応できるシート構成でした。乗務員室の後部には大きな荷物置き場が設けられており、旅行者の手荷物に対応していました。車端部にはフリースペースとベンチがあり、リフレッシュしたり、他の乗客と交流したりできる空間となっていました。こちらの車両の車内照明にはLED照明が採用されていました。

沿革

2014年 11月27日：専用車両「フルーティア」の導入計画が発表される。
2015年 4月25日：福島デスティネーションキャンペーンに合わせて、磐越西線郡山駅 - 会津若松駅間で定期列車併結による運行を開始（1日2往復）。
2019年 4月6日：定期運行区間が磐越西線郡山駅 - 喜多方駅間に延長され、単独運行化（1日1往復に変更）。
2020年：新型コロナウイルス感染拡大の影響により、一時的な運休やサービス方法の変更が行われる。
2022年 11月24日：車両老朽化に伴い、2023年12月での運行終了方針が発表される。
2023年11月16日：具体的な運行終了日（12月24日）が発表される。
* 2023年12月24日：最終運行日を迎え、運行を終了。

「フルーティアふくしま」は、福島県の魅力であるフルーツを切り口に、特別な鉄道旅のスタイルを提案した列車として、多くの人々に愛されました。その運行は終了しましたが、受け継がれる観光列車「SATONO」が、これからも福島県の旅の楽しみを届けてくれることでしょう。

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