マイク・ラヴ

マイケル・エドワード・ラヴ：ザ・ビーチ・ボーイズの軌跡と遺産

マイケル・エドワード・ラヴ(1941年 3月15日 - )は、カリフォルニアの伝説的バンド、ザ・ビーチ・ボーイズの創設メンバーとして知られています。ウィルソン兄弟の従兄弟という血縁関係も持ち、バンドの初期から中心的な存在として活躍しました。彼のキャリアは、リードボーカル、作詞作曲、バンドの運営、そしてブライアン・ウィルソンとの複雑な関係など、多岐に渡る側面を持っています。

リードボーカルと作詞家としての貢献

ラヴはビーチ・ボーイズの数々のヒット曲でリードボーカルを務めました。「サーフィンUSA」「409」「アイ・ゲット・アラウンド」「カリフォルニア・ガールズ」など、誰もが耳にしたことがある名曲の数々が彼の声によって彩られています。彼のボーカルスタイルは、サーフィンやホットロッドをテーマにした初期の楽曲では、軽快で鼻にかかった独特のしゃがれ声、一方、「ハッシャバイ」や「ココモ」といったスローテンポの楽曲では、より繊細でささやくような表現力を見せました。また、コーラスでは低音パートを担当し、ブライアン・ウィルソンのファルセットと相まって、ビーチ・ボーイズ特有のハーモニーを形成する重要な役割を果たしました。

作詞家としてのラヴの才能も特筆すべきです。サーフィンや恋愛をテーマにした多くの楽曲の作詞を手がけ、バンドの初期イメージ確立に大きく貢献しました。特に「アイ・ゲット・アラウンド」のイントロは彼の作曲によるものです。1970年代以降はソロ作品も発表し、多様な音楽性を示しました。

バンドの中心人物として

ブライアン・ウィルソンが精神疾患や薬物問題に苦しんだ1960年代後半には、ラヴはバンドを支える中心的役割を果たしました。しかし、バンドの物語においては、しばしば「悪役」として描かれることも少なくありません。この描写の信憑性については、様々な意見が存在します。彼は保守的な考えを持つ一方で、ポップミュージシャンとして初めて超越瞑想を実践し、1968年のアルバム『フレンズ』ではその経験を反映した楽曲を発表するなど、多面的な人物像がうかがえます。

1980年代前半には、バンドの主導権を握り、過去のヒット曲の再来を目指して1960年代風の楽曲を制作しました。楽器演奏の面では、テナーサックスやタンバリンが得意で、ステージ上でも活躍しました。「ココモ」のミュージックビデオではサックスソロも披露していますが、実際にはジョエル・ペスキンによる演奏だったとされています。また、ギターやピアノにもある程度の造詣があり、作曲にも役立てていたと考えられます。

ブライアン・ウィルソンとの複雑な関係と『ペット・サウンズ』／『スマイル』論争

ブライアン・ウィルソンが『ペット・サウンズ』や『スマイル』の制作において、トニー・アッシャーやヴァン・ダイク・パークスといった外部のソングライターに依存するようになったことで、ラヴは自身の立場が脅かされると感じ始めました。特に『ペット・サウンズ』収録の「ハング・オン・トゥ・ユア・エゴ」には反対したと言われています。この曲は後に「救いの道」としてアルバムに収録されましたが、この出来事はラヴとブライアンの関係に深刻な亀裂を生じさせました。

ラヴは、『ペット・サウンズ』においてバンドが成功したイメージを放棄することに懸念を抱き、ブライアンの急速な音楽的進化がバンドを困難な状況に追い込んだことに不満を持っていました。「グッド・ヴァイブレーション」の複雑なアレンジは、ライブ演奏を不可能にするほどであったため、アレンジの簡略化やツアーメンバーの追加などの措置が取られることになりました。

後年、ラヴは『ペット・サウンズ』を高く評価しながらも、『スマイル』については、ビーチ・ボーイズとして完成させた方が良かったという意見を述べています。

法的紛争とその後

1992年には、1962年から1966年にかけて発表された48曲について、ブライアンが作詞作曲クレジットに自分の名前を入れなかったとして、ブライアンを訴えました。その結果、35曲についてラヴのクレジットが認められ、和解金として50万ドルを得ました。この訴訟は、ブライアンを一時的にビーチ・ボーイズに復帰させるという効果も生みました。

カール・ウィルソンの死去とアル・ジャーディンの脱退後、ラヴはビーチ・ボーイズ名義でライブ活動を行う唯一のオリジナルメンバーとなり、現在も世界中でツアーを続けています。2012年には、ビーチ・ボーイズのデビュー50周年記念プロジェクトに参加しましたが、その後は再び自身のバンドでの活動に戻っています。

結論

マイク・ラヴは、ザ・ビーチ・ボーイズの成功に大きく貢献した人物であり、そのキャリアは数々のヒット曲、バンド内での複雑な人間関係、そして音楽史における重要な論争を巻き起こしました。彼の功績は、ビーチ・ボーイズの歴史に深く刻まれています。

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