モジホコリ

モジホコリについて

モジホコリ（Physarum polycephalum）は変形菌に属し、アメーボゾアの一種です。主に湿った日陰の環境を好み、林床の落ち葉や腐った木の表面などで見られます。この生物は単細胞でありながら、肉眼で確認できる大きさに成長し、巨大な多核体から構成されています。モジホコリは生物学および生態学の研究において重要なモデル生物として広く使用されています。

モジホコリの特徴

モジホコリはその見た目が特徴的で、一般的には黄色い色合いを持っています。この生物は菌類の胞子や細菌などの微生物を捕食し、栄養を得ることで成長します。モジホコリは他の真核生物に比べて培養が容易で、アメーバ運動や細胞の原形質流動に関する研究に活用されています。培養されたモジホコリの面積は、場合によっては5平方メートル以上にも達することがあります。

生活環境と体制

モジホコリの栄養相では、流動する原形質から成る活動的な変形体が見られます。この変形体は、前部がシート状、後部が網目状の管構造を形成し、餌を探す際に役立っています。餌を見つけると、モジホコリはその原形質で餌を包み込み、消化液を分泌して消化します。

また、モジホコリは乾燥環境に遭遇すると皮体（sclerotium）という休眠状態に移行します。この皮体は長期間の環境変化に耐えられる構造で、再び良好な条件になると変形体に戻り、餌を探し続けます。餌がなくなると、モジホコリは生殖の段階に進み、胞子を生成します。

原形質流動のメカニズム

モジホコリの変形体における運動は、外層（皮質）と内層（ゾル）の二重構造から成っています。アクチン繊維の収縮と弛緩によって生じる動きが、変形体内で流動を引き起こします。特に「シャトルストリーミング」という現象が見られ、ATPやプロトン濃度に変化を与えています。この流動が生成する圧力勾配によって、様々な要素が相互に作用する複雑な系を形成します。

培養方法

モジホコリの培養には、湿らせた紙や寒天培地が適しています。オートミールなどの食物を供給することで、長期間にわたり変形体を維持することが可能です。但し、光の影響を受けると子実体への移行がなされるため、温度管理された暗所が推奨されます。

知能と行動

興味深いことに、モジホコリは単細胞生物でありながら、一定の知能を示す行動を見せます。中垣俊之らの研究では、モジホコリが迷路実験において最短経路を選ぶ能力が観察されました。この実験では、モジホコリが複数の経路を試みつつ、最適な餌への経路を選択する様子が記録されました。

さらに、モジホコリは周囲の環境に応じて行動を変えることもできることが示されています。ストレスを受けた変形体は、それを予見し、特定の間隔で動作を減少させる習慣を形成します。

生体コンピュータとしての潜在能力

ブリストルのウエスト・オブ・イングランド大学の研究者たちは、モジホコリの行動を正確に制御できることから生体コンピュータの材料としての可能性を指摘しています。このような生物が持つ特性を利用することで、新たな技術開発が進むことが期待されています。

モジホコリは、環境への適応能力と独自の運動メカニズムを持つことで、今後もさまざまな研究に寄与していくことでしょう。

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