ヤマトリカブト

ヤマトリカブト（山鳥兜）

ヤマトリカブト（学名：Aconitum japonicum subsp. japonicum）は、キンポウゲ科トリカブト属に分類される多年生の有毒植物です。日本固有種であり、その名前は広く知られていますが、分布域は本州の太平洋側に限られています。

特徴

ヤマトリカブトは、その形態に著しい変異が見られます。地下には直径1-3cmの塊根を持ち、茎は生育環境によって大きく異なります。林内や林縁では斜上し、上部が湾曲して先端が垂れる一方、草原では直立し、高さは60-200cmに達します。茎の上部には屈毛が生え、中部でよく分枝しますが、枝はあまり伸びません。根出葉と茎の下部の葉は、花時には枯れてなくなります。

中部の茎葉は五角形から五角形状円形で、長さ6-17cm、幅6-22cm。3深裂から3中裂し、裂片は羽状に切れ込むか、粗い鋸歯状になります。葉柄は長さ2-8cmで、屈毛が生えるか無毛です。

花期は8月から11月。花序は長さ5-8cmで、茎が斜上する場合は総状花序、直立する場合は散房花序となり、1-5個ほどの花をつけます。花は上部から下部に向かって咲きます。花柄は長さ3-10cmで、下向きの屈毛が密生。花柄の中部には線形から披針形で長さ3-10mmの小苞がつきます。花の色は青紫色、青色、赤紫色、まれに黄白色で、大きさは3-5cm。花弁に見えるのは萼片で、上萼片1個、側萼片2個、下萼片2個の計5個で構成されています。

特に特徴的なのは、かぶと状になる上萼片で、円頭の円錐形から僧帽形で、長さ20-28mm、幅14-23mm。前方の嘴は長く尖るか、または短くなります。萼片の外側には屈毛が生えています。花弁は上萼片の中に隠れて見えませんが、柄、舷部、蜜を分泌する距、唇部で構成されています。1対あり、柄は長さ18-20mm、舷部は長さ9-13mmあって大きく膨らみ、距は細長く180度以上に内側に曲がるか、まれに短い嚢状になります。雄しべには開出毛が生えるか無毛、雌しべは3-5個あり、無毛か屈毛が生えます。果実は長さ10-15mmの袋果となり、直立するか斜めに開きます。種子は長さ4mmで、染色体数は2n=32の4倍体種です。

分布と生育環境

ヤマトリカブトは日本固有種で、本州の関東地方（栃木県）から中部地方（愛知県）にかけての太平洋側に偏って分布しています。低山帯から山地帯の林内、林縁、草原などに生育します。

名前

和名「ヤマトリカブト」は、「山鳥兜」を意味し、山地に生えることに由来するとされています。種小名のjaponicumは「日本の」という意味です。

毒性

ヤマトリカブトは、根、茎、葉、花など、植物全体に毒性成分であるアルカロイドを含んでいます。特に根に毒成分が多く含まれており、誤って摂取すると、神経麻痺、呼吸困難、心停止などを引き起こす危険があります。トリカブトによる中毒事故は、山菜と間違えて摂取するケースが多いため、注意が必要です。

下位分類

ヤマトリカブトには、いくつかの下位分類が知られています。

ハコネトリカブト: 風衝草原に生育する直立型
イヌハコネトリカブト: ヤマトリカブトとセンウズモドキとの交雑種と推定されるもの

分類

ヤマトリカブトは、トリカブト属トリカブト亜属のうち、花弁の舷部が距に向かって膨大するキヨミトリカブト節に属し、同節のうち、花はふつう花序の上から下に向かって開花するヤマトリカブト列に分類されます。

ヤマトリカブト列に属する日本に分布する種のうち、温帯に生育する種としては、ヤマトリカブトの他、ヤサカブシ、コウライブシ（亜種にセンウズモドキがある）、ウゼントリカブト、オンタケブシ、カワチブシなどが属します。これらの種は、花の形や葉の切れ込み方、毛の有無などで区別されます。

レッドデータ

環境省のレッドデータブックには選定されていませんが、愛知県では絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。

類似種との区別点

ヤマトリカブト類は、花柄と上萼片に屈毛が生えることで共通しています。その他の類似種との区別点は以下の通りです。

ウゼントリカブトとオンタケブシ: 葉が腎円形で3浅裂-中裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴が短い。
コウライブシ: 葉が五角形で3全裂-深裂し、花柄と上萼片に開出毛と腺毛が生え、上萼片の嘴が長い。
* カワチブシ: 花柄と上萼片が無毛。

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