リヨン級戦艦

リヨン級戦艦：建造されなかったフランス海軍の巨艦

フランス海軍が第一次世界大戦前、1915年度計画において建造を決定した超弩級戦艦がリヨン級です。4隻の建造が予定されていましたが、第一次世界大戦の勃発により建造は中止され、資材は他の用途に転用されました。本稿では、この幻の戦艦について、その艦型、武装、機関、そして建造予定艦などを詳細に解説します。

艦型

リヨン級は、優れた凌波性能を実現するため、長船首楼型船体を採用しました。特徴的なクリッパー・バウを持つ艦首から高く取られた乾舷、そして艦首甲板上に配置された上部構造物が印象的です。

主砲は、世界初の四連装砲塔に収められた「1912年型34cm（45口径）砲」4基16門を搭載。1番主砲塔は艦首に、2番主砲塔は背負い式に配置され、その後ろに操舵艦橋と大型の装甲司令塔、そして三段測距儀が配置されています。1番煙突、単脚式マスト、2番煙突と続き、艦載艇置き場には片舷に1基ずつの計2基のクレーンが設置されていました。艦載艇置き場の後部には、3番主砲塔が後向きに、さらに甲板一段分下がって後部甲板上に4番主砲塔が後向きに配置されるという、独特の配置がなされています。この背負い式配置により、前級よりも主砲塔を1基増やすことに成功しました。

副砲は、ケースメイト式に配置された「M1910型 13.9cm（55口径）砲」24門。艦首に8門、艦尾に4門、両舷に12門ずつ配置され、あらゆる方向からの攻撃に対応できるよう配慮されていました。さらに、対水雷艇用としてオチキス47mm単装速射砲6基、対艦攻撃用として45cm水中魚雷発射管6基も搭載していました。

主砲塔

リヨン級の主砲は、前級のノルマンディー級と同様に「1912年型34cm（45口径）砲」を採用しましたが、世界初の四連装砲塔に収められた点が画期的です。当時の戦艦では連装式、一部に三連装式が主流でしたが、フランスはそれを凌駕する四連装砲塔の開発に成功しました。これにより、本級は戦艦史上最多となる16門の主砲を搭載することになります。

砲塔は俯仰能力が高く、仰角18度から俯角5度まで自由に砲身を動かせ、どの角度でも装填可能な自由角装填方式を採用していました。左右150度の旋回角度を持ち、砲身の俯仰、砲塔の旋回、砲弾の揚弾、装填は主に電力で行われ、補助的に人力も使用しました。発射速度は毎分2発で、555kgという重量級の徹甲弾を最大射程18,000mまで発射可能でした。

副砲、その他の備砲

副砲は、前級と同じ「M1910型 13.9cm（55口径）砲」を採用。39.5kgの砲弾を最大射程16,100mまで発射できました。

機関

機関は、重油・石炭混焼水管缶21基、高速型直結タービン2基、そして三段膨脹式レシプロ機関2基を組み合わせたものでした。前級よりも最大出力が向上し、43,000shp、速力23ノットを発揮する中速戦艦となる予定でした。

同型艦

リヨン (Lyon): 1915年1月1日発注、起工せず。
リール (Lille): 起工せず。
デュケーヌ (Duquesne): 起工せず。
トゥールヴィル (Tourville): 1915年4月1日発注、起工せず。

結論

リヨン級は、その革新的な設計と強力な武装により、建造されたならば世界最強クラスの戦艦になった可能性を秘めていました。しかし、戦争の影に阻まれ、その姿を現すことはありませんでした。その存在は、技術の進歩と戦争の悲劇を同時に象徴すると言えるでしょう。

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