リーシュマニア

リーシュマニア（Leishmania）

リーシュマニアは、トリパノソーマ科に属する微細な原生生物であり、脊椎動物の細胞内に寄生してリーシュマニア症を引き起こします。この病原体の名前は、イギリス陸軍の軍医であるウィリアム・リーシュマンに由来しています。リーシュマニアは主にサシチョウバエにより媒介され、旧世界においてはPhlebotomus属、新世界ではLutzomyia属のサシチョウバエが関与しています。主な宿主は哺乳動物であり、特に人間や犬、げっ歯類などの感染が多く報告されています。

生態と生活環

リーシュマニアは、以下の2つの形態学的なステージを持っています。
1. 前鞭毛型（promastigote） - 鞭毛を持ち、サシチョウバエの体内で存在します。
2. 無鞭毛型（amastigote） - 鞭毛がない形態で、哺乳動物の細胞内で増殖します。

サシチョウバエに刺されると、特に発育終末前鞭毛型が体内に入り、刺された周辺の組織でマクロファージに貪食されます。この過程で、リーシュマニアは無鞭毛型に変化し、細胞内に留まって増殖を开始します。無鞭毛型は特定の組織に病変を形成し、その結果として異なる症状が現れます。

サシチョウバエは感染したマクロファージを取り込み、この過程でリーシュマニアは再び前鞭毛型に戻り、サシチョウバエの中腸で発育します。最終的には、再度口吻に移動し、次の宿主へ感染する準備を整えます。

起源と伝播

リーシュマニアの起源については明確な結論はありませんが、アフリカが起源であり、様々な媒介昆虫を介して新世界や旧世界に伝播した可能性があります。その後、ヨーロッパの植民地化に伴い、特定の種が地中海沿岸からラテンアメリカへと広がったと考えられています。

分類

リーシュマニア属には約50種が確認されており、従来は寄生するサシチョウバエ内の部位に基づいて3つの亜属に分類されていましたが、近年の分子系統解析から4つの亜属に分かれました。主な亜属は以下の通りです：

• - Leishmania亜属: 旧世界に広がる生物群。
• - Viannia亜属: 主に新世界に見られる寄生虫で、皮膚リーシュマニア症を引き起こすことが多い。
• - Sauroleishmania亜属: 主に爬虫類に寄生します。
• - Mundina亜属: その他の分類群に属するもの。

これらの分類は、各種の寄生部位や特性によって異なります。特に、Leishmania亜属の中には、内臓リーシュマニア症を引き起こすL. donovaniや皮膚型のL. tropicaなどが含まれています。

歴史

リーシュマニアの発見については様々な記録があります。1885年にイギリス軍の軍医が観察を行ったものの、病原体との関連には気づかなかったとされています。その後、1900年にウィリアム・リーシュマンがこの微生物を発見し、正式に報告しました。これにより、リーシュマニアは新たに知られることとなり、以降さまざまな研究が行われています。

分子生物学と感染機序

リーシュマニアの重要な特徴として、リポフォスフォグリカン（LPG）による複合糖質層があります。これは、感染を持続させる上で不可欠な役割を果たしています。また、感染の初期段階では、PMN（好中球）がリーシュマニアを貪食しようとしますが、独自の戦略を用いてそれを回避することができます。最終的にはマクロファージに感染し、より効果的に体内で生き残ることが可能となります。

このように、リーシュマニアはその複雑なライフサイクルと感染機序により、研究の対象として重要視されています。

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