ルースレス

ルースレス：アメリカ競馬史に輝く名牝

1864年から1876年にかけて活躍した競走馬ルースレスは、アメリカ競馬界にその名を刻んだ伝説的名牝です。特に、第1回ベルモントステークスの優勝馬として知られており、その輝かしい戦績とドラマチックな生涯は、今もなお語り継がれています。

ルースレスの母バルバリティは、名種牡馬レキシントンの元所有者であったリチャード・テン・ブロウク氏によって所有され、マッチレースで3勝を収めるなど優れた成績を残していました。その後、ブロウク氏とフランシス・モリス氏の間でトラブルが発生し、その和解条件としてバルバリティはモリス氏に譲渡されます。モリス氏は、同じくブロウク氏から譲り受けたエクリプスII（18世紀の名馬エクリプスとは別の馬）をバルバリティに種付けし、ルースレスが誕生しました。この組み合わせは成功を収め、バルバリティはその後もエクリプスIIとの間に優秀な牝馬を4頭産み出しました。これらの姉妹は、母馬の名にちなみ「バルバロスバタリオン」と呼ばれ、ルースレスと共に競馬史に名を残しました。

ルースレスの競走馬としてのキャリアは目覚ましいものでした。2歳時には4戦2勝を挙げ、ナーサリーステークスで勝利を収めました。3歳となった1867年にはさらに活躍の場を広げ、7戦5勝2着2回という素晴らしい成績を残します。そして、歴史的瞬間が訪れます。ジェロームパーク競馬場で行われた第1回ベルモントステークス。13ハロン（約2615メートル）という距離、4頭立てという競争の中、ルースレスは唯一の牝馬として参加し、DeCourceyにアタマ差で勝利を収めたのです。ベルモントステークスを制した牝馬は、他に第39回優勝馬タニヤと第139回優勝馬ラグズトゥリッチズしかいません。この勝利は、ルースレスの類まれな能力を証明するものでした。さらに、続く第4回トラヴァーズステークスでも勝利し、牝馬として2度目の優勝を飾ります。ベルモントステークスとトラヴァーズステークスを両方制した牝馬は、ルースレスただ一人です。3歳で引退するまでに、ルースレスは11戦7勝2着4回という輝かしい成績を残しました。

引退後は繁殖牝馬としてモリス氏の牧場で過ごしましたが、活躍する産駒を残すことはできませんでした。1876年、ハンターの誤射によって負傷し、数週間後に亡くなりました。しかし、ルースレスの功績は忘れられることはありませんでした。1975年、アメリカ競馬名誉の殿堂博物館に殿堂馬として選出され、その名声は永久に輝き続けます。現在でも、アケダクト競馬場では1月にルースレスステークスが行われ、この偉大な牝馬の功績が称えられています。

ルースレスの姉妹である「バルバロスバタリオン」も、それぞれが優れた競走馬として活躍しました。Relentlessは1867年度最優秀2歳牝馬に選出され、Remorselessも1869年度最優秀2歳牝馬という栄冠に輝いています。RegardlessやMercilessもアラバマステークスなど重要なレースで好成績を残しました。しかし、母としてはいずれも成功を収めることができませんでした。

ルースレスの生涯は、並外れた才能と短くも輝かしい競走馬としてのキャリア、そしてアメリカ競馬界への多大なる貢献を物語るものです。彼女の伝説は、これからも競馬ファンを魅了し続けるでしょう。

もう一度検索