ワイヤレスマイク

ワイヤレスマイクとは

ワイヤレスマイクは、音声信号を電波などの電磁波を用いて伝送するマイクロホンです。ケーブルを必要としないため、動きながらの音声収録が可能となり、様々な分野で利用されています。電波を利用するものはラジオマイクとも呼ばれます。この記事では、ワイヤレスマイクの基本的な仕組み、種類、歴史、そして技術的な進歩について解説します。

ワイヤレスマイクの概要

ワイヤレスマイクは、その名の通りケーブルを必要としないマイクであり、電波や赤外線などの電磁波を使って音声信号を送信します。これにより、マイクを持つ人が自由に動き回れるため、エンターテイメント業界、テレビ放送、パブリックアドレスなど、幅広い分野で活躍しています。特に、ステージパフォーマンスやスポーツ中継など、動きを伴う場面でその利便性が発揮されます。

日本では、電波法に基づき、電波を使用するものはラジオマイクと区別されることもあります。また、赤外線を利用するものは赤外線ワイヤレスマイクとして別途扱われることがあります。

ワイヤレスマイクの種類

ワイヤレスマイクには主に二つの形状があります。

1. ハンドヘルド型
- 有線マイクと同様の形状で、送信機と電池が内蔵されています。手で持って使用するタイプで、一般的に最もよく見られる形です。

2. ボディパック型
- 送信機と電池が内蔵された小型のケースで、腰などに装着します。襟元に付けるラベリアマイク（ピンマイク）やヘッドセットマイクと組み合わせて使用します。

近年では、技術の進歩により、さらに小型化が進んでいます。ギターなどの楽器に取り付けるタイプや、ヘッドセットに一体化されたタイプ、既存のマイクに取り付けてワイヤレス化するユニットなども登場しています。

ワイヤレスマイクの歴史

ワイヤレスマイクの「発明者」は特定されていませんが、1940年代にはすでにアマチュア向けの製作記事や通信販売広告が存在していました。初期のものはAM変調方式で、主にホビー用途で使用されていました。

1947年には、イギリスの航空機関士であるReg Mooresが、アイスショーで使用する目的で送信機を製作しました。これは実用的な初期の事例の一つですが、当時の電波法に抵触するため特許は取得されませんでした。

1950年代には、アメリカのHerbert McClellandが、プロ野球中継でアンパイアが背負う送信機を開発しました。また、Shure社は1953年に、パフォーマー向けの実用的なワイヤレスマイク「Vagabond88」を発売しました。

1957年には、ドイツのLaboratorium Wennebostel（現ゼンハイザー）が、北ドイツ放送と協力してワイヤレスマイクシステム「Lab W」を発表し、その後「Mikroport」として商品化しました。

1958年には、ソニーが「CR-4ワイヤレスマイク」を発売し、送信機を小型化しました。これは、劇場やナイトクラブで使用されるようになりました。

1961年には、Raymond A. Litkeがワイヤレスマイクに関する最初の特許を登録しました。Litkeの試作品は、Vega Electronics Corporationによって「Vega-Mike」として製品化され、1960年のアメリカ大統領選挙でABCテレビの記者がインタビューに使用しました。

1964年には、映画『マイ・フェア・レディ』で、レックス・ハリソンの音声収録にワイヤレスマイクが初めて使用されました。

1976年には、John Nadyがコンパンディング技術の特許を取得し、Nasty Cordless,Inc.（後のNady Systems）を設立しました。Nadyは、世界初のイヤーモニターシステムやPLLシンセサイザUHFワイヤレスマイクを開発しました。

1979年には、ケイト・ブッシュが音楽用ワイヤレスマイク付きヘッドセットを初めて使用し、以降多くのアーティストがライブパフォーマンスでこのスタイルを取り入れました。

ワイヤレスマイクの技術

ワイヤレスマイクは、音声を電波に乗せて送受信する仕組みを持っています。初期はFM変調が用いられましたが、音質の向上や多チャンネル化のためにデジタル化が進みました。技術的な進歩には以下のようなものがあります。

変調方式: FMからデジタル変調へ
コンパンディング: 伝送路の雑音によるSN比の劣化を改善
コーデック: 高音質化と低遅延を両立
PLL: 送受信機の多チャンネル化を実現
* マイク自体の音質向上: より高音質な音声収録が可能に

周波数と免許

ワイヤレスマイクが使用する周波数帯は国によって異なり、免許が必要な場合もあります。900MHz帯、2.4GHz帯、5.8GHz帯などのISMバンドが無線通信に流用されるようになり、免許不要で使用できるものも現れました。各国のワイヤレスマイクの免許については、関連情報を参照してください。

まとめ

ワイヤレスマイクは、ケーブルの束縛から解放され、より自由でダイナミックな音声表現を可能にする重要なツールです。その技術は常に進化しており、今後も様々な分野での活躍が期待されます。

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