七志

南朝宋の時代、傑出した書誌学者であった王倹によって編纂された『七志』は、中国における図書[[目録]]の重要な歴史的資料です。現存はしていませんが、『隋書・経籍志』には『七志七十巻、王倹撰』と記録されており、その規模が相当なものであったことがうかがえます。

『七志』は、その名の通り七つの部に分類されています。その分類体系は、中国の伝統的な書物分類である『七略』を踏襲しており、経典、諸子、文翰、軍書、陰陽、術芸、図譜の七志で構成されています。しかし、『隋書・経籍志』の記述からは、仏教経典道教経典の項目がそれぞれ追加されていたことが示唆されており、実際には九つの分類項目によって構成されていたと考えられます。

この仏教と道教経典を付加した分類は、当時の書物分類の状況を反映していると言えるでしょう。『隋書・経籍志』自身も、四部分類を標榜しながら、実際には仏教と道教経典を含めて六つの部に分類していることから、『七志』の分類体系も、時代の流れや学問の発展を反映した、柔軟な分類体系であったと推察できます。

王倹は『七志』以外にも書誌学に関する著作を残しており、『宋元徽元年四部書目録』四巻が知られています。この書目録は、中国で伝統的に用いられてきた四部分類(経、史、子、集)による分類を採用していることから、『七志』における七分類と対比することで、当時の書物分類の多様性や、王倹自身の書誌学における研究の広さを知ることができます。

『七志』は現存しないため、その詳細な内容を知ることはできませんが、『隋書・経籍志』の記述と、王倹の他の著作を手がかりに、その分類体系や内容、そして当時の書誌学の状況を推測することができます。現存しないという点で、研究上の困難はありますが、中国書誌学の歴史を理解する上で、非常に重要な位置を占める図書[[目録]]であると言えるでしょう。

王倹が『七志』を編纂した背景には、南朝宋という時代背景も深く関わっていると考えられます。南朝宋は、魏晋南北朝時代における一つの王朝であり、文化的には高度な発展を遂げましたが、政治的には不安定な時代でもありました。こうした状況下で、王倹は膨大な書物を分類・整理する作業を通して、文化の継承と発展に貢献しようとしたのかもしれません。

『七志』は、単なる書物リストではなく、当時の知識体系や文化状況を反映した貴重な資料です。その研究を通して、中国古代の知的・文化史の一端を垣間見ることができるでしょう。今後の研究において、関連資料の発見や新たな解釈によって、『七志』の全貌がより明らかになることが期待されます。

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