七略

七略：古代中国の知の宝庫を映す蔵書目録

『七略』は、中国前漢の時代、劉向と彼の息子劉歆によって編纂された、朝廷の蔵書を網羅した貴重な目録です。現存はしていませんが、その内容は『漢書』の芸文志や他の文献からの引用によって、部分的に現代に伝わっています。本稿では、『七略』の成立過程、分類体系、内容、そして関連文献まで、分かりやすく解説します。

成立と分類体系

劉向は、皇帝の蔵書である「秘書」の整理と校閲を命じられました。その過程で、彼は蔵書を六つのカテゴリーに分類し、『別録』という書物を編纂しました。しかし、この『別録』も現存しません。 その後、劉向の死後、息子の劉歆が『別録』を簡略化し、七つのカテゴリーに再分類して『七略』を完成させました。

『七略』は、七つの分類項目（「略」）から構成されています。ただし、最初の「輯略」は全体の総目次のような役割を果たすため、実質的な分類は六つです。これらの分類は、後世の四部分類（経・史・子・集）とは異なり、例えば「六芸略」は「経部」、「諸子略」は「子部」、「詩賦略」は「集部」にそれぞれ相当します。「兵書略」「術数略」「方技略」は、後世では「子部」に含まれる項目ですが、『七略』では独立した分類として扱われています。これは、漢代の学術分類において、兵法や方術が諸子とは別個に扱われていたことを示唆しています。また、「史部」が独立していない点は、劉向・劉歆の時代には史書がまだ独立した分類として確立していなかったことを示しています。

内容

『七略』は、七つの「略」の下にさらに細かい分類を設け、各書物の書名、巻数などの情報を記載していました。現在の『漢書』芸文志の各分類の冒頭に置かれている「小序」は、『七略』の「輯略」に相当すると考えられています。各書の書名や巻数だけでなく、内容の紹介や批判、偽書の識別、学派や評価なども記されていたと推測されます。残念ながら、詳細な内容は不明な部分が多いですが、当時の学問状況や蔵書の状況を知る上で非常に重要な資料です。

七つの分類項目

輯略 (全体総目次)
六芸略 (六芸に関する書物)
諸子略 (諸子百家の書物)
詩賦略 (詩歌や賦に関する書物)
兵書略 (兵法に関する書物)
術数略 (占星術、暦法、数学などの書物)
* 方技略 (医術、技術などの書物)

関連文献

『七略』は散逸したため、その内容を知るためには、関連文献を参考にする必要があります。例えば、姚振宗の『七略別録佚文』や、余嘉錫の『古書通例：中国文献学入門』などが挙げられます。これらの文献は、『七略』の断片的な情報を集め、当時の文献状況を研究する上で貴重な資料となっています。

まとめ

『七略』は、現存しないながらもその分類体系や内容の一部が『漢書』芸文志などに残されており、中国古代の文献分類史や蔵書史を理解する上で極めて重要な役割を果たしています。後世の文献分類に大きな影響を与えた『七略』の研究は、これからも続いていくでしょう。 『七略』の研究を通して、古代中国の知の広がりと深さを垣間見ることができます。 散逸した書物であるにも関わらず、その影響力は現代まで及んでいるのです。

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