上島鬼貫

上島鬼貫

上島鬼貫（うえじま おにつら）は、17世紀後半から18世紀前半にかけて活躍した江戸時代の俳諧師です。1661年に摂津国伊丹（現在の兵庫県伊丹市）で生まれ、1738年に大坂で亡くなりました。幼名は竹松といい、俳号は点也、仏兄（さとえ）、即翁、槿花翁（きんかおう）、自休庵、馬楽堂など多数ありました。また、武士として仕えた時代には藤原宗邇（ふじわら むねちか）と名乗り、晩年には平泉惣右衛門と称しました。

生い立ちと俳諧への道

鬼貫は、伊丹でも有数の酒造業者である上島宗次の三男として生まれました。幼い頃から俳諧に親しみ、13歳で松江重頼（維舟）に師事し俳諧の道に入りました。その後、西山宗因の談林派にも入門し、俳諧の腕を磨きました。25歳で医学を志して大坂に出ましたが、やがて武士としての道を歩むことになります。

武士としての経歴と俳諧活動

鬼貫は、筑後国三池藩、大和国郡山藩、越前国大野藩などに仕え、勘定職や京都留守居役などを務めました。多忙な武士としての生活を送る一方で、俳諧への情熱を失うことはありませんでした。蕉門の広瀬惟然や八十村路通らと交流し、彼らを通じて松尾芭蕉とも親交を深め、その作風に影響を受けました。芭蕉の没後も、鬼貫は俳諧への探求を続け、独自の境地を開拓していきました。

「まこと」の俳諧

享保3年（1718年）には、俳論書である『獨言（ひとりごと）』を刊行しました。この中で鬼貫は、「まことの外に俳諧なし」と述べ、俳諧の本質は真実を捉えることにあると主張しました。この主張は、当時の俳壇に大きな影響を与え、「東の芭蕉、西の鬼貫」と並び称されるほどに評価されるようになりました。鬼貫は、自身の俳諧観を追求し、独自の俳諧世界を築き上げたのです。

死と遺産

鬼貫は、1738年に大坂で亡くなり、享年78歳でした。墓所は大阪市天王寺区の鳳林寺と伊丹市の墨染寺にあります。彼の忌日である8月2日は「鬼貫忌」と呼ばれ、河東碧梧桐によって秋の季語とされました。また、1991年からは、故郷の伊丹市で「鬼貫賞」という俳句コンテストが開催され、鬼貫の俳諧精神は現在にも受け継がれています。

主な作品

大悟物狂
獨言
仏兄七久留万
犬居士
それぞね草

参考文献

坂口昌弘著『ヴァーサス日本文化精神史』文學の森
上島鬼貫（坪内稔典・著、神戸新聞総合出版センター、2001年）

外部リンク

財団法人柿衞文庫



鬼貫は、武士としての責任を果たしながら、俳諧の世界で独自の境地を切り開いた人物でした。彼の作品や思想は、現代の俳句にも大きな影響を与え続けています。

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