中谷雄太

中谷雄太：挫折と挑戦、そして希望の物語

1979年生まれの中谷雄太氏は、日本中央競馬会（JRA）に所属していた元騎手です。幼少期はプロ野球選手を夢見ていましたが、兄の影響で競馬にのめり込み、騎手への道を歩み始めました。

競馬学校を卒業後、1998年にデビュー。同期には、後にスター騎手となる池添謙一氏らもいました。デビュー当初は的場均氏を目標に掲げ、見習い時代は着実に実績を重ねました。しかし、減量制度の変更後、騎乗機会が減少し、未勝利のシーズンも経験するなど苦悩の時期も送りました。引退も考えた時期もありましたが、加藤征弘氏や萩原清氏らの厩舎で厩務に従事する中で、関係者からの信頼を得て、再び騎乗機会が増えていきました。

転機の一つとなったのは、2010年6月26日、福島競馬2Rでの出来事です。最下位人気のヴィヴィアンに騎乗し3着に入線、JRA複勝配当史上最高額（当時）となる16,110円の高配当を演出しました。この出来事が、中谷氏の騎手人生における大きな自信へと繋がっていったのです。同年11月には、アルゼンチン共和国杯で初騎乗のコスモヘレノスで3着に入り、自身初の重賞入着を果たしました。そして、デビュー14年目にして念願のGIレースである天皇賞（春）への騎乗も果たしました。

更なる飛躍を目指し、2013年11月末、中谷氏は栗東トレーニングセンターへ拠点を移しました。矢作芳人厩舎を拠点に活動を開始し、関西での騎乗機会が増加。2014年にはJRA通算100勝を達成するなど、順調にキャリアを重ねていきました。2015年には栗東所属に変更。2016年には自身最多となる25勝を挙げ、年末には有馬記念にも初騎乗を果たすなど、充実した日々を送っていました。

中谷氏と矢作調教師の関係は、中谷氏の騎手人生において重要な要素でした。矢作調教師は中谷氏の才能を見抜き、環境を変えることで人間も変わると信じ、彼を支え続けました。中谷氏自身も矢作厩舎での仕事にやりがいを感じていたと語っています。

しかし、2018年4月8日、福島競馬場でのレース中、落馬事故に遭い、重傷を負ってしまいました。第1・第2頸椎骨折および胸椎骨折という危険な状態でしたが、矢作調教師の献身的な対応もあり、意識を取り戻し、約8か月間のリハビリを経て、奇跡的に復帰を果たしました。

2020年5月、中谷氏は現役引退を表明しました。40歳での引退を目標としていた中谷氏でしたが、落馬事故の影響もあり、結果を残すことが困難な状況にあったことを明かしました。それでも後悔はないと語り、5月24日、新潟競馬場でのレースを最後に、騎手生活に幕を閉じました。JRA通算成績は4465戦181勝。重賞は制覇できませんでしたが、多くの名馬に騎乗し、競馬界に貢献しました。

中谷雄太氏の騎手人生は、決して順風満帆なものではありませんでした。しかし、困難を乗り越え、常に前向きに努力を続ける姿は、多くの人々に感動を与え続けました。彼の物語は、挫折を乗り越えて夢を追い続けることの大切さを教えてくれる、希望に満ちた物語と言えるでしょう。

主な騎乗馬

ビクトリーアップ
ザッハーマイン
コスモヘレノス
コスモオオゾラ
ネコパンチ
ニシケンモノノフ
シャドウアプローチ
リスグラシュー
ステイフーリッシュ
キングハート
* カフジプリンス

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