二礼二拍手一礼

二礼二拍手一礼：神社の参拝作法

二礼二拍手一礼（にれいにはくしゅいちれい）は、神社における一般的な拝礼作法です。この作法は、二度お辞儀をし、二度拍手を打ち、最後にもう一度お辞儀をするという一連の流れで行われます。神社本庁や伊勢神宮などでは「二拝二拍手一拝」と呼ぶこともあります。この作法は、時代とともに変化し、神社や地域によって特色が見られることもあります。

概要

現在の神社参拝の基本形とされる二礼二拍手一礼は、戦後に一般化した作法です。多くの神社では、参拝者にこの作法を推奨する掲示が見られます。ただし、神社によっては異なる作法を用いる場合もあります。

伊勢神宮では、以下の手順で「参拝の作法（二拝二拍手一拝）」が推奨されています。

1. 神前に進み、姿勢を正します。
2. 背中を平らにし、腰を90度に折り、深いお辞儀を2回行います。
3. 両手を胸の高さで合わせ、右手を少し下にずらします。
4. 両手を肩幅程度まで開き、拍手を2回打ちます。
5. ずらした指先をもとに戻し、深いお辞儀を1回します。

最後の一拝の前に両手を降ろす指示はありませんが、実際には降ろすことが多いようです。この作法は、社頭拝礼の際に行われるほか、昇殿参拝や玉串拝礼の際にも用いられます。

歴史

伊勢神宮によれば、深いお辞儀は「拝」、手を打ち鳴らすことは「拍手」といい、これらは古来からの敬礼作法です。ただし、二拝二拍手一拝の由来については明確な言及はありません。神社本庁は、参拝作法が長い間変化してきており、現在は二拝二拍手一拝が基本形となっているとしています。

二礼二拍手一礼普及前の神前拝礼

古事類苑によると、本来の拝礼は座ったまま拝んで拍手を打つ「座拝拍手」でした。仏教が盛んになるにつれて、合掌が一般的になり、古来の拝は「ハイ」と呼ばれるようになりました。また、立って拝む作法は、中国や朝鮮の礼式を模倣したものです。拍手の回数も時代によって異なり、「八開手」といって8回拍手するのを一段とし、最大で32回拍手することもあったようです。

二拝二拍手一拝の起源

二拝二拍手一拝の起源には諸説ありますが、明治8年の神社祭式で規定された「再拝拍手」が基になっているという説があります。これは、2回続けて深いお辞儀をしてから拍手を打つという作法で、現在の二礼二拍手一礼に通じるものです。

明治17年には、平田胤雄が『祭式摘要』を出版し、開扉時、祝詞読了後、閉扉後に二拝二拍手一拝を含む作法を行うことを示しました。明治40年には、内務省が神社祭式行事作法を定めましたが、これには最後の一拝はありませんでした。大正9年には、筧克彦が皇国運動を発表し、体操の前後に二拝二拍手一拝を行う作法を示しました。昭和9年には、文部省が小学児童の神社参拝作法案を例示し、その中で二拝二拍手一拝を含む拝礼作法を紹介しました。昭和16年には、文部省が「礼法要項」を制定し、神への拝礼として二拝二拍手一拝を行うこともあるとしました。戦後、神社本庁が示した神社祭式行事作法では、宮司の作法に「二拝（再拝）二拍手一拝」と記されています。

内務省「神社祭式行事作法」

明治から昭和にかけて、内務省は「神社祭式行事作法」を定め、神職や官吏が行う作法として、二拝二拍手一拝に近い作法を規定しました。具体的には、開扉の後、閉扉の前、御幣物奉奠の後に宮司が二拝二拍手を行うとされました。また、拍手の作法については、両手を合わせ静かに左右に開いて拍ち合わすとされました。

内務官僚校閲による参拝心得

明治44年に刊行された『神社行政法講義』では、神社参拝の拝礼として、一拝二拍手→拝詞→二拍手一拝を行うことが推奨されました。これは、二拝二拍手一拝とは異なり、最初にするのが一拝であること、二拍手を2度行うことなどが特徴です。

筧克彦の皇国運動

大正9年に筧克彦が発表した「皇国運動」は、体操の前後に二拝二拍手一拝を行うものでした。この運動は、貞明皇后によって宮中に広められ、実践されました。

小学児童神社参拝作法

昭和9年、文部省は小学児童の神社参拝の課目を設け、その中で二拝二拍手一拝を含む拝礼作法を例示しました。

伊勢神宮への遥拝

昭和9年、中央[[教化団体連合会]]は、各地の教化指導者が関わる儀式において、伊勢神宮に対して遥拝を行う場合、二拝二拍手一拝を行うことができるとしました。

文部省「礼法要項」

文部省が1941年に制定した礼法要項では、神社の拝礼で二拝二拍手一拝を行うこともあるとされました。ただし、これは必須ではなく、拝だけで済ませることもありました。また、拝礼の前後には「揖」をする、つまり約15度の浅いお辞儀をすることが定められていました。

社頭拝礼の作法

社頭における拝礼の作法は、神社によって様々です。神社本庁では、神社参拝は二拝二拍手一拝を基本とするとしていますが、神社によっては特殊な拝礼を行うところもあります。

各作法の持つ意味

神社本庁によると、拝礼については具体的な作法の前提にある意味を理解することが重要です。例えば、最初の二拝は神への敬意と感謝を表し、拍手は神に誠の心を捧げ、神から恩恵を受けていること感謝して打つものとされています。

拝礼中の祈り

神社によっては、二拝二拍手一拝の途中で祈念や祈願をすることを指導しているところもあります。その際、日頃の感謝を述べたり、願い事を伝えたりすることが推奨されます。

拝と礼の異同

拝礼方法の呼び名については、二拝二拍手一拝と呼ぶ神社もあれば、二礼二拍手一礼と呼ぶ神社もあり、神社によって異なります。一般的に、腰を90度に折るような深いお辞儀を「拝」と呼び、それより浅いお辞儀を「揖」と呼び、「拝」と「揖」とを総称して「礼」と呼びます。

靖国参拝時の拝礼

靖国神社では、正式参拝の方法として、参拝者は手を洗い口をすすぎ修祓をうけ本殿で玉串をそなえ、そして神社祭式である二拝二拍手一拝を行うという基準を定めています。

中曽根内閣の一礼公式参拝

1985年、中曽根内閣は公式参拝の名目で靖国神社に参拝するにあたって、二拝二拍手一拝をやめて、ただ一礼する形を採りました。これは、二拝二拍手一拝するような参拝形式は宗教儀式にあたると判断したためです。

橋本首相の二礼二拍手一礼

橋本龍太郎は首相に就任した後、靖国神社を参拝し、その様式は二礼二拍手一礼の神道方式であったと報道されました。

安倍首相の二礼二拍手一礼

2013年、安倍晋三首相は靖国神社に昇殿参拝し、二礼二拍手一礼の神道形式で拝礼しました。

まとめ

二礼二拍手一礼は、日本の神社における基本的な参拝作法です。その歴史や作法の意味を理解することで、より丁寧な参拝をすることができます。神社を訪れる際には、ぜひこの作法を実践してみてください。

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