享保大判

享保大判について

享保大判（きょうほうおおばん）は、江戸幕府が享保10年（1725年）に鋳造を開始し、翌年12月1日（1726年1月3日）に発行された大型の金貨です。この大判は、正徳4年（1714年）の吹替えによって慶長金銀の品位に戻った金貨に続き、大判も慶長大判と同等の品位に復帰させる目的で鋳造されました。

特筆すべきは、享保大判が初めて公式に通用価値が設定された大判であるという点です。享保小判や一分判との間で、七両二分という公定価格が定められました。しかし、元文元年（1736年）の元文の吹替え以降は、元文小判に対し十両の相場が一般化しました。

概要

享保大判の表面には、墨で「拾両後藤（花押）」と書かれています。この墨書は、後藤四郎兵衛家の十二代寿乗から十七代典乗まで、六代にわたる書が存在します。流通期間が長かったため、書き改めも頻繁に行われたことが、この多様な墨書の存在からも伺えます。特に初期の十二代寿乗による墨書は非常に希少です。

大判の上下左右には、丸枠桐紋の極印がそれぞれ一箇所ずつ、計四箇所打たれています。形状はやや角ばった楕円形ですが、慶長大判よりも撫で肩になっているのが特徴です。裏面の中央には丸枠桐紋、亀甲桐紋、花押の極印が打たれており、左下には「久・さ・竹」、「久・石・竹」、「久・坂・竹」、「久・宇・竹」、「久・七・竹」のいずれかの極印が打たれています。

享保大判の鋳造枚数は8,515枚ですが、そのうち15枚は試鋳のため潰され、実際に発行されたのは8,500枚です。この大判は慶長大判の品位を復帰させるものでしたが、通用が停止されていた慶長大判が両替商に持ち込まれた際、大岡忠相は通用を認めず、潰金扱いとする裁定を下しました。これは、正徳の吹替えによって再び通用が認められた慶長小判とは異なる扱いでした。

享保大判の通用期間は、享保10年12月1日（1726年1月3日）から万延元年4月10日（1860年5月30日）までと非常に長く、その間、江戸時代の経済を支える重要な役割を果たしました。

参考資料

享保大判画像

わが国の貨幣史

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