加戸守行

加戸守行（かと もりゆき）

プロフィール

加戸守行は、1934年9月18日に生まれ、2020年3月21日に亡くなった日本の政治家です。愛媛県知事を3期12年務めたほか、文部官僚としても活躍しました。また、「美しい日本の憲法をつくる愛媛県民の会」の実行委員長や、日本会議愛媛県本部の相談役も務めました。

経歴

知事就任前

加戸は、関東州大連市で生まれ、愛媛県立八幡浜高等学校、東京大学法学部を卒業後、1957年に文部省（現在の文部科学省）に入省しました。

文化庁著作権課長時代には、著作権法施行令及び同法施行規則の立案に携わり、ベルヌ・万国両条約パリ改正会議など、著作権関係の国際会議にも多数出席しました。文化庁文化部長、文化庁次長を経て、著作権法一部改正を含む5本の法案を担当・成立させ、現行著作権法の草稿執筆者としても知られています。

1988年には文部省大臣官房長に就任しましたが、1989年にリクルート事件に関与したとして辞職しました。その後、日本芸術文化振興会理事長や日本音楽著作権協会（JASRAC）理事長などを歴任しました。

知事就任後

1999年の愛媛県知事選に出馬し、自民党、社民党、自由党などの推薦を受け、現職知事を破って初当選しました。2010年まで3期12年間、愛媛県知事を務めました。全国の都道府県知事の中で唯一の文部省出身者でした。2008年には社会保障国民会議委員も兼務しました。

2010年5月に任期満了前の引退を表明し、同年11月30日に退任しました。退任会見では、愛媛県武道館の建設を知事としての功績として挙げ、義務教育費国庫負担の国の負担率引き下げを後悔の残る点として挙げました。

歴史教科書採択問題

2001年と2002年に県立中学（中高一貫校）と県立学校の教科書採択に際して、加戸は歴史教科書について「扶桑社版がベスト」と発言し、県教育委員会は扶桑社版（いわゆる「つくる会」教科書）を採用しました。この件は、知事の教育への介入ではないかとの議論を呼びました。2005年と2009年の教科書採択でも、県立学校では扶桑社版が引き続き採用されました。2010年度からは、今治市と越智郡上島町の公立中学校でも扶桑社版の歴史・公民教科書が採用されました。

知事退任後

2011年度より大阪国際大学客員教授を務め、2012年には旭日重光章を受章しました。2013年から2015年まで教育再生実行会議委員を務めました。2020年3月21日、骨髄異形成症候群のため85歳で亡くなり、死没日をもって正四位に叙されました。

発言

飲酒運転で摘発された県議

2004年に県議が飲酒運転で逮捕された際、加戸は議会からの辞職要求に対し、「県議としての活動が継続できなくなるような重大な事態とは考えていない」と述べ、議員の進退は本人が判断すべきだとの考えを示しました。

加計学園問題

加戸は、加計学園問題に関して、「ゆがめられた行政が正された」「報道しない自由」といった発言で注目を集めました。2017年の閉会中審査では、愛媛県にとって12年間加計ありきだったこと、岩盤規制に穴を開けてもらったことなどを主張しました。

また、一部メディアが自身の発言を報じないことを批判し、「報道しない自由」や「印象操作」といった報道のあり方について問題提起しました。特に、前川喜平氏による証言を巡り、自身が教育再生実行会議の委員になった理由が歪曲されていると指摘しました。

鹿野川ダム誤認発言

2019年の選挙応援演説で、加戸は鹿野川ダムの改造工事が旧民主党政権下で凍結されたため、西日本豪雨の被害を防げなかったと主張しましたが、実際には事業は凍結されておらず、地質上の問題が遅延の原因であったことが判明し、誤りであったことが指摘されました。

著作

加戸は著作権法の専門家として、以下の著書を執筆しました。

『著作権法逐条講義』（複数版）
『著作権制度の課題と展望 創立25周年記念講演会』
『我が流儀は「加戸流」 南海放送ラジオ番組「加戸さんの今日もあなたと」より』（複数版）
『ふるさと愛媛に愛と心を 「加戸流県政改革」3期12年』
『日本の魂―加戸守行遺稿撰』

編集・監修

『初任者研修指導者必携（加除式）』
* 『初任者研修実務ハンドブック 計画と効果的実践のために』

家族

兄の加戸弘二は、医療法人弘友会会長を務めています。

まとめ

加戸守行は、文部官僚、愛媛県知事、教育者として多岐にわたる分野で活躍した人物です。著作権法の専門家として法改正に尽力し、知事としては県政改革を推進しました。また、教育問題やメディアのあり方についても独自の視点と発言で注目を集めました。その生涯は、日本の政治と文化の発展に大きく貢献しました。

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