南イタリア

南イタリアの地域概要

南イタリアは、イタリア南部を指す呼称であり、正式には「Italia meridionale」とも称されます。この地域は、イタリアを北部、中部、南部に分けた場合の南部を指しており、カンパニア州、アブルッツォ州、モリーゼ州、プッリャ州、バジリカータ州、カラブリア州の6つの州に加えて、しばしばシチリア州も含まれます。これは、イタリア統一以前には両シチリア王国が存在したことから、文化的な近似性が見られるためです。さらに、ラツィオ州やサルデーニャ州が含まれることもあります。

文化的背景

南イタリアは一見、統一された文化を有するようですが、シチリア王国とナポリ王国の歴史的分立が存在し、それぞれに言語や伝統の違いがあります。シチリア語とナポリ語は特に代表的な例であり、他の州にも各自の特色が見られます。政治的には南イタリア全体が長い間中央集権的な外部の圧力にさらされていたため、地域間の文化的差異が小さい一方で、特有の不信感とそれに起因する社会問題が根付いています。

政治的動向

南イタリアでは保守的な政治的動きが強く、1946年の王政廃止に関する国民投票では、北部とは対照的に多くの住民が王政の存続を選びました。特にナポリでは、投票者の約80%が王政廃止に反対しました。ナポリで起きたメディナ事件のように、王政支持の動きは南部の社会に影響を与えています。さらに、南イタリアにはサヴォイア家の復位やシチリア・ブルボン朝の復活を望む運動も存在し、地域的な政治的複雑さを増しています。

南部問題：社会経済的課題

南イタリアの経済的劣位は「南部問題」として知られています。この問題は、イタリア統一の背景にある経済的格差や、差別の歴史が反映されています。19世紀には、統一を主導したガリバルディの行動に対して、南部の住民は反抗的な態度を示しました。それに伴い、北部人による南部人への蔑視が強まるきっかけともなりました。これに対抗してブリガンテと呼ばれる反乱者が出現しましたが、彼らもまた弾圧の対象となりました。

社会的偏見と差別の根深さ

19世紀の犯罪者論において提唱された「生来性犯罪者」という分類は、南イタリア人への偏見を助長する要因となりました。このような考え方は、南部住民に対する差別的見解を広め、彼らが社会的に孤立する一因となりました。ロンブローゾの学説はその後も影響を持ち続け、特に移民をめぐる論争の中で再び高まっていきました。

近代の展開

現代においても、南イタリア人は「テッローネ」という侮蔑的な言葉によって、サッカースタジアムなどで差別的に扱われることがあります。経済的な遅れは、1990年代に北部同盟という地域政党が生まれる背景にもなりました。この政党は、南部を「切り離す」ことを目的にしており、経済格差を問題視しています。

南イタリアの文学

南イタリアの実態は多くの文学作品にも描かれています。ジョージ・ギッシングの『南イタリア周遊記』やカルロ・レーヴィの『キリストはエボリで止まった』など、地域の文化や社会情勢を伝える貴重な資料となっています。これらの作品は、南イタリアの人々の生活や意識を知る手助けとなるでしょう。

南イタリアは、その美しさや文化的深さだけでなく、複雑な歴史と社会的課題を抱える地域でもあります。それぞれの州や地域が持つ独自性や課題を理解することが、より良い関係性を築く第一歩となります。

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