南池袋公園

南池袋公園：歴史と再生の物語

東京都豊島区南池袋に位置する南池袋公園は、区民にとってかけがえのない憩いの場です。2016年のリニューアルオープン以降、その魅力はさらに増し、多くの人々が訪れる人気スポットとなっています。しかし、この公園の歴史は、現在の姿からは想像もつかないほど複雑で、そしてドラマチックなものです。

戦前からの歴史：根津山と空襲

太平洋戦争以前、公園の敷地は「根津山」と呼ばれていました。西武池袋本店前から護国寺方面に伸びるグリーン大通り沿いに広がる、600メートルもの長さを持つ広大な雑木林で、所有者である実業家・根津嘉一郎の名にちなんで名付けられました。しかし、戦争の影は根津山にも忍び寄ります。戦時中には防空壕が掘られ、1945年4月の東京大空襲では、池袋周辺は焦土と化しました。根津山は、空襲で亡くなった方々の仮埋葬地となり、多くの遺体が運び込まれたのです。埋葬作業には、近くの東京拘置所の囚人が動員されたという悲しい歴史も刻まれています。

戦後の変遷：公園の誕生と再生

戦後、戦災復興土地区画整理事業によって、公園周辺の環境は大きく変わりました。1946年には、区内の寺院が公園隣接地に移転。根津山の雑木林は姿を消し、仮埋葬されていた遺体も別の場所に本葬されました。そして1951年11月、根津山跡地に「雑司ヶ谷公園」が開園します。その後、住居表示の変更に伴い、1966年に現在の「南池袋公園」と改称されました。

開園後も、地下鉄有楽町線の開通など、区による再整備が何度か行われましたが、財政難により老朽化が進み、公園の環境は悪化の一途を辿りました。噴水の故障も修理できない状況となり、ホームレスの方々が住み着くようになり、近隣の小学校が児童に立ち入りを禁止する通達を出すほど、公園は荒廃していったのです。

リニューアル：防災と憩いの空間へ

転機となったのは、2006年頃、東京電力からの公園地下への変電設備設置の提案でした。区はこの提案を契機に、本格的な公園再整備に乗り出します。当初は通常の公園整備を予定していましたが、東日本大震災を経験したことを踏まえ、防災機能の強化も視野に入れた計画へと変更されました。さらに、近隣に区役所新庁舎（としまエコミューゼタウン）が新設される計画も踏まえ、公園の再整備は池袋駅東側の国際アートカルチャー構想に位置づけられることになりました。

2009年から始まったリニューアル工事のため、公園は一時閉鎖されました。そして2016年4月2日、全面リニューアルオープンを果たします。リニューアルされた公園は、季節に合わせて夏向きと冬向きの芝生が植えられ、一年中緑あふれる空間となりました。ソメイヨシノやヤマザクラなど約2500本の草木、子供たちが楽しめる滑り台や回転遊具も設置され、親子連れにも優しい空間となりました。

公園内には、「Racines FARM to PARK」というカフェレストランもオープン。帰宅困難者対策の備蓄倉庫も備え、防災機能も強化されました。公園の維持管理費は、東京電力からの地下占用料、地下鉄有楽町線からの占用料、そしてカフェからの使用料によって賄われ、区は樹木の剪定などのハード面の維持管理を担当しています。公園の利用方法やルールづくりは、「南池袋公園をよくする会」という地域住民による団体に委ねられるなど、地域住民参加型の運営体制も特徴です。

公園の未来

リニューアルされた南池袋公園は、数々の賞を受賞しています。2017年度グッドデザイン賞、照明学会照明デザイン最優秀賞、2018年日本造園学会賞、2020年JFMA賞優秀ファシリティマネジメント賞など、その高いデザイン性と機能性が評価されました。

かつてホームレスの方々の集まる場所でもあった南池袋公園は、今では多くの人々が集い、憩う場所として生まれ変わりました。その歴史と再生の物語は、都市公園のあり方について、多くの示唆を与えてくれるでしょう。公園の未来は、地域住民の協力と、行政の継続的な努力によって、より素晴らしいものとなるに違いありません。

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