南部晴政

南部晴政の生涯

南部晴政は、永正14年（1517年）に南部氏23代当主である南部安信の嫡男として生まれました。天文6年（1537年）には、早くも紫波郡で和賀義勝、斯波氏の軍勢と戦うなど、若くして武将としての才能を発揮しました。しかし、天文8年（1539年）には家臣の裏切りによって三戸城を焼失し、多くの文書を失うという苦難も経験しました。同年、上洛し、室町幕府12代将軍・足利義晴から「晴」の字を賜り、南部氏惣領としての地位を認められたとされています。

翌天文9年（1540年）には、戸沢政安、斯波経詮の侵攻に対して叔父である石川高信を派遣し、これを撃退。岩手郡を掌握するなど、着実に勢力を拡大していきました。そして、天文10年（1541年）に南部氏の家督を継ぎ、24代当主となりました。家督相続後には、謀反を起こした工藤氏を討伐し、焼失した三戸城を再建するなど、南部氏の統一に尽力しました。ただし、この時期の南部氏の状況については、根城系と三戸系に分裂していたとする説もあり、晴政が三戸系の当主であったのか、根城系を討ち取ったのかなど、不明な点も多く残されています。

勢力拡大と内紛

晴政には男子がいなかったため、永禄8年（1565年）に叔父である石川高信の子、信直を長女の婿とし、養嗣子として迎えました。しかし、永禄9年（1566年）には、安東愛季による鹿角郡への侵攻が始まり、長牛城を巡る激しい戦いが繰り広げられました。晴政は一族を率いてこれに対抗し、最終的に鹿角郡を奪還することに成功しました。この戦いを通じて、八戸政儀、一戸政連、九戸政実らに「政」の字を与えることで、主従関係を強化し、南部氏の勢力は北は下北半島から南は北上川中央部までに拡大しました。

しかし、元亀元年（1570年）に実子・晴継が誕生すると、晴政は養子である信直を疎んじるようになります。元亀2年（1571年）には、大浦為信が信直の実父である石川高信を討ち、津軽地方を制圧するという事件が起こりますが、晴政は信直との確執からこれに対応しませんでした。信直との対立は深まり、元亀3年（1572年）には、信直が晴政を襲撃する事件も起こりました。信直は身の危険を感じ、晴政の養嗣子の座を辞退し、田子城に引き籠もるなど、南部家は内紛状態に陥りました。

その死と評価

天正10年（1582年）、晴政は病死しました。享年66歳。家督は嫡男の南部晴継が継ぎました。

晴政は、若い頃から勇猛果敢な武将として知られ、その治世は南部氏の最盛期を築きました。外交にも長け、織田信長との交流もあったとされています。一方で、実子誕生後の信直との確執は、南部家を内紛に陥らせる要因となり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

また、晴政には、鷹狩りの際に田植え中の娘に泥を塗られても「めでたいことだ」と返したり、盗まれた刀を「若い侍が魔が差したのだろう」と許したりするなど、寛大な一面も持ち合わせていました。しかし、三戸南部氏と大浦南部氏の家伝には食い違いが多く、この時代の北奥羽の研究は進んでいないため、晴政の実像については不明な点も多く残されています。

晴政の没年については、明治36年（1903年）に作られた『南部史要』は天正10年（1582年）死亡説を唱えていますが、文久元年（1861年）に編纂された『三戸南部系図』では元亀3年（1572年）死亡説を採っています。信直との不和や、信直派による謀反の可能性など、様々な説が提唱されており、その真相は未だ解明されていません。

晴政の系譜

父：南部安信
母：不詳
正室：不詳
室：大宝比丘尼（百姓の娘）
長男：南部晴継
長女：石川信直正室
次女：九戸実親正室
三女：東朝政正室
四女：徳隠妙俊大姉 - 南盛義正室
五女：高源寺殿春林妙喜比丘尼 - 北秀愛正室

関連作品

ゲーム：『戦国BASARA3』(2010年、カプコン)

参考文献

星川正甫『南部藩参考諸家系図 第１巻』国書刊行会　1984年12月15日
岩手県立図書館 編『岩手史叢 第4巻』 1974年
田中喜多美 編『岩手県郷土史年表 : 上代・中世・近世・近代(昭和20年まで)』万葉堂書店　1972年

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