九戸政実

九戸政実

九戸政実（くのへ まさざね）は、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、南部氏の家臣であり、九戸城主です。九戸氏は、南部氏の始祖である南部光行の六男・行連が九戸郡伊保内に入部したことに始まるとされていますが、小笠原氏を名乗っていたとする説もあり、その出自は定かではありません。室町幕府からは、南部宗家と同等の武将として認識されていました。政実は、行連から数えて11代目にあたり、武将としての優れた才能を持ち、その勢力を大きく拡大しました。

生涯

九戸氏の勢力拡大

政実の時代、九戸氏はその勢力を著しく拡大させました。永禄12年（1569年）には、南部晴政の要請に応じ、安東愛季が侵攻した鹿角郡の奪還に協力し、その勢力を広げました。また、斯波氏の侵攻に際しても、石川高信を支援し、講和に貢献しました。このように、政実は武将としての才覚を発揮し、その名を轟かせました。

晴政・晴継の死と、信直との対立

南部氏二十四代当主・南部晴政には男子がいなかったため、永禄8年（1565年）に石川高信の子である信直を婿養子として迎えました。しかし、後に晴政に実子である晴継が誕生し、さらに信直の妻が亡くなったことで、後継者争いが勃発します。晴政は信直への不信感を抱き続け、九戸氏と連合して信直に対抗しようとしました。

天正10年（1582年）に晴政が亡くなると、南部氏の家督を巡り、信直と晴継の間で激しい争いが始まりました。晴政の後を継いだ晴継は、三戸城に帰城する際に暗殺されてしまいます。その後、南部一族や重臣が集まり、後継者を選ぶための評定が行われました。有力候補として、晴政の娘婿である九戸実親と、かつて養子でもあった信直が挙げられました。評定では実親を推す声が強かったものの、最終的には信直が後継者に決定しました。この結果に不満を抱いた政実は、自領へと帰還しました。

九戸政実の乱

天正14年（1586年）に、政実は信直に対して公然と当主を自称するようになります。天正18年（1590年）の豊臣秀吉による奥州仕置後も、この姿勢を崩すことはありませんでした。そして、天正19年（1591年）1月、南部氏の正月参賀を拒否し、同年3月には5,000の兵を率いて挙兵しました。九戸勢は元々南部氏の精鋭であり、さらに家臣の日和見もあって、信直は苦戦を強いられました。最終的に、信直は秀吉に援軍を要請し、豊臣秀次を総大将とする討伐軍が奥州へと進軍を開始しました。

討伐軍は蒲生氏郷、浅野長政、石田三成らを主力とし、総勢6万人を超える大軍となりました。同年9月1日、討伐軍は九戸氏の所領への攻撃を開始しました。翌2日には、政実と実親が籠る九戸城を包囲しました。政実は善戦したものの、最終的には抗戦を諦め、出家姿で討伐軍に降伏しました。政実と実親は、秀次の陣へと引き出され、斬首されました。九戸一族も女子供を含め斬殺され、九戸氏は滅亡しました。しかし、政実の弟である中野直康の子孫は、南部家中で家老を務める家柄として存続しました。

家臣

九戸政実の家臣には、以下のような人物がいました。

姉帯兼興（大学）
刑部兼直（刑部）
姉帯兼信（五郎）
姉帯兼政（与次郎）
一戸実富（彦次郎）
一戸光方（図書助）
大里親基（修理）
大野弥五郎
大湯治郎左衛門
大湯昌吉（四郎左衛門）
大湯昌致（彦左衛門）
大湯昌次（四郎左衛門）
長内庄兵衛
長内伝右衛門
長内昌茂（弥兵衛、弥五郎）
長内昌教（弥左衛門）
軽米兵右衛門
工藤業綱（右馬介）
久慈直治（備前守）
久慈政則（中務）
櫛引興繁（出雲守）
櫛引清長
櫛引清寛（十兵衛）
櫛引清政
九戸実親
九戸連尹（隠岐）
九戸尹実（杢兵衛）
車門小左衛門
高家将監
小軽米久俊（左衛門、入道一熈斉）
小鳥谷摂津守
七戸家国
七戸将監
七戸慶高（大輔）
七戸慶道（伊勢守）
嶋森安芸守
天魔源左衛門
中野康実
夏井久膳
晴山忠房（治部少輔）
晴山玄蕃
円子光種
横浜慶房

九戸政実を題材とする作品

九戸政実を題材とした作品は、小説や漫画など多岐にわたります。以下はその一部です。

高橋克彦『天を衝く』
三浦哲郎「贋まさざね記」
早坂昇龍『九戸戦始末記　北斗英雄伝』
安部龍太郎『冬を待つ城』
渡辺 喜恵子 『南部九戸落城』
九戸政実プロジェクト『マンガ 九戸政実物語』

関連項目

戦国時代の人物一覧
安土桃山時代の人物一覧
九戸政実の乱

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