和学講談所

和学講談所の概要

和学講談所（わがくこうだんしょ）または和学所（わがくしょ）は、1793年に塙保己一によって設立された、日本の国学研究及び教育の機関です。この機関は、国典の教授や文献の調査、出版事業などを通じて、日本の歴史研究に大きな影響を与えました。

設立の経緯

和学講談所は1793年2月に創立されました。創設者である塙保己一は、「歴史律令之類」の振興を目指し、江戸幕府に設立を願い出ました。4月にはその許可を得て、同年11月には麹町の裏六番町に講談所の建設が完了し、講談会が始まりました。保己一は水戸藩の『大日本史』の校合に参加した実績があり、幕府からも信頼を受けていました。

1795年には、町屋敷から年々の上納金が支給されるようになり、和学御用筋としての地位が確立されていきました。1805年に表六番町に移転した後も、その活動は続けられました。

主な事業

和学講談所の主要な事業は多岐にわたりました。主な活動内容は以下の通りです。

1. 国典の教授

毎月定例の講談会が開かれ、特に『古事記』や六国史、『源氏物語』などが講義の対象となりました。この講談会は、保己一の依頼により松平定信によって「温古堂」と名付けられました。

2. 文献の調査・編集

紅葉山文庫に資料を蓄積するため、公卿の記録を筆写する作業などが行われました。1806年には幕府から「史料」や「武家名目抄」の編纂を命じられ、全国の史料を訪ねて調査を行いました。

3. 出版事業

保己一が個人で企画した「群書類従」の編纂・刊行が行われました。また、「日本後紀」「令義解」「百練抄」「扶桑略記」といった書籍も出版され、国学の発展に寄与しました。1819年には41年の歳月をかけて『群書類従』が刊行され、多くの門弟が育ちました。

和学講談所の終焉

1821年に塙保己一が亡くなると、和学講談所は彼の子、忠宝へと継承されました。しかし出版事業は停滞し、講談会や編纂事業は続けられました。1863年には忠宝が尊攘派によって暗殺され、その後は次男の忠韶が継承しましたが、「史料」の編纂も停止し、1868年には新政府によって和学講談所は廃止されました。

その跡地は、1869年に新政府によって史料編輯国史校正局として利用され、和学講談所の蔵書は東京大学史料編纂所へと引き継がれました。その後、史料編纂事業は『大日本史料』として引き継がれています。

ゆかりの地

現在、和学講談所の跡地は千代田区三番町に位置し、「塙検校和学講談所跡」として歴史的価値が認められています。1955年には東京都旧跡に指定されました。この地にはかつて標柱と銘板がありましたが、現在は撤去され、代わりに看板が設置されています。地理的には、北緯35度41分31.20秒、東経139度44分36.924秒と位置しています。

史料の重要性

和学講談所は、国史の編纂において重要な役割を担いました。六国史以降の国家史編纂が行われなかった中、彼らは重要な歴史資料を年代順に整理し、約150年の資料を403巻にまとめました。宇多天皇事記や醍醐天皇事記などが1810年から1860年までに献上され、これらは未刊行のまま現在も史料編纂所で保管されています。

結論

和学講談所は、日本の国学の発展に貢献した重要な機関であり、その影響は今なお続いています。歴史的な資料の編纂や出版活動は、後の歴史研究に大きな礎を築きました。

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