国縫駅

国縫駅は、北海道山越郡長万部町に位置するJR北海道函館本線の鉄道駅です。駅番号はH49が付与されており、かつては電報略号「クニ」として親しまれていました。かつてこの駅は、日本海側へと延びていた国鉄瀬棚線の分岐点であり、函館本線との重要な交通結節点としての役割を担っていました。そのため、一時期は急行列車や快速列車も停車し、賑わいを見せていました。

歴史

この駅の歴史は古く、1903年（明治36年）11月3日に北海道鉄道が森駅と熱郛駅の間を開通させた際に、その一駅として開業しました。当初は貨物や荷物も取り扱う一般駅としてスタートしました。開業から数年後の1907年（明治40年）1月17日には、開業当初の位置から約1.1キロメートルほど長万部寄り、現在の旧中ノ沢駅方向へ移転しています。同年7月1日には北海道鉄道が国有化され、国縫駅も国有鉄道の駅となりました。さらに1909年（明治42年）10月12日には、国有鉄道の線路名称が制定され、函館本線に組み込まれました。

国縫駅が交通の要衝としての地位を確立したのは、瀬棚線の開業が大きいです。1929年（昭和4年）12月13日、瀬棚線の当駅と花石駅の間が開通し、続いて1932年（昭和7年）11月1日には瀬棚駅まで延伸されて全通しました。これにより、渡島半島内陸部と日本海側を結ぶルート上の拠点となり、人や物の流れが活発になりました。駅舎についても、需要の増加に対応するためか、1939年（昭和14年）12月に改築が行われています。第二次世界大戦後、1949年（昭和24年）6月1日には日本国有鉄道法が施行され、国鉄の駅として運営が続けられました。

函館本線の改良も進められました。1960年代には当駅を含む区間の複線化工事が行われ、輸送力強化が図られました。特に当駅から中ノ沢駅間は、1966年（昭和41年）の9月28日と12月25日の二段階に分けて複線化が完成しました。この区間の一部では土地買収に時間を要し、土地収用法が適用されるという事情もありました。その後、1970年（昭和45年）9月25日には北豊津信号場と当駅の間も複線化され、当駅の長万部方は複線区間となりました。

時代の流れとともに、鉄道貨物輸送や荷物輸送が衰退し、国縫駅でも1984年（昭和59年）2月1日をもって貨物および荷物の取り扱いが廃止されました。さらに、利用者の減少などを受けて、1986年（昭和61年）11月1日には、当時停車していた急行「ニセコ」が廃止されたことで、優等列車の停車がなくなり、同時に駅の無人化が実施されました。ただし、瀬棚線に関する閉塞扱いの業務のため、一部の要員は引き続き配置されていました。しかし、その瀬棚線もバスへの転換が進み、1987年（昭和62年）3月16日をもって廃止されました。これにより、国縫駅は交通結節点としての役割を終え、函館本線の単独駅となりました。その翌日、1987年（昭和62年）4月1日には国鉄の分割民営化が実施され、国縫駅はJR北海道の駅として新たなスタートを切りました。瀬棚線廃止後もわずかに残っていた簡易委託による業務も1992年（平成4年）4月1日に終了し、完全に無人駅となり、現在は長万部駅が管理を行っています。2007年（平成19年）10月1日には、駅業務の合理化と利用者の利便性向上を図るため、駅ナンバリングが導入され、「H49」という駅番号が与えられました。

駅名の由来

駅名の「国縫（くんぬい）」という名称は、アイヌ語に漢字を当てた地名に由来していますが、その正確な語源についてはいくつかの説があります。有力な説としては、「クンネヌイ（kunne-nuy）」、つまり「黒い・野火」を意味するというものや、アイヌの伝説に登場する「クンネナイ（kunne-nay）」、「黒い・川」に由来するという説があります。また、かつて海岸に砂鉄が多く見られたことから、「クンネ（kunne）」、単純に「黒い」という意味に由来するという説も挙げられています。いずれにしても、この地域の自然や伝承に根差した名前であると考えられています。

駅構造

駅の構造は、単式ホーム1面と島式ホーム1面を組み合わせた2面3線の地上駅となっています。駅舎は開業以来の改築を経た木造建築が残っており、懐かしい雰囲気を漂わせています。この駅舎は単式ホーム（1番線）に面しており、駅の出入口となっています。島式ホーム（2番線・3番線）を利用する、特に長万部方面へ向かう列車に乗車する際には、駅舎側のホームとは跨線橋を使って連絡しています。この3番ホームは、かつて瀬棚線の列車が使用していた名残をとどめています。現在、国縫駅は前述の通り完全に無人化されており、駅舎内もかつての賑わいはありませんが、地域の歴史を見守ってきた建物として存在感を放っています。

駅周辺

駅周辺には、国縫の市街地が広がっています。交通アクセスとしては、主要幹線道路である国道5号線と国道230号線が近くを通っており、道央自動車道の国縫インターチェンジも利用可能です。公共施設としては、八雲警察署国縫駐在所や国縫郵便局（ただし集配業務は長万部郵便局が担当）があります。かつて子どもたちの声が響いた長万部町立国縫小学校は閉校し、その跡地周辺には国縫振興会館などがあります。自然景観としては、近くに坊主山があり、またピリカ温泉も比較的近隣に位置します。海岸部に出れば、国縫漁港や国縫漁港海浜公園があり、漁業やレクリエーションの場となっています。地域住民のための町営国縫団地なども点在しています。駅前には函館バスの「国縫」停留所があり、鉄道に代わる地域の公共交通手段として機能しています。

隣の駅

函館本線における国縫駅の隣駅は、函館方面が黒岩駅（H51）で、その間には北豊津信号場があります。長万部方面は長万部駅（H47）で、かつては当駅と長万部駅の間に中ノ沢駅（H48）が存在しましたが、こちらは既に廃止されています。また、旧瀬棚線においては、国縫駅の次の駅は茶屋川駅でした。このように、国縫駅は函館本線の駅として歴史を刻みながら、かつての瀬棚線との分岐点として地域の交通を支えた役割や、無人駅となった現在の姿など、多くの変遷を経てきた駅です。

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