埴科郡

埴科郡：歴史と変遷をたどる信濃の郡

長野県東部に位置する埴科郡は、古くから歴史と文化が息づく地域です。人口は約13,000人、面積は53.64平方キロメートルと、長野県の中でも比較的コンパクトな郡です。現在、坂城町が唯一の町として存在しています。

古代からの歴史

考古学的調査から、大宝律令以前は、現在の更級郡とともに「科野評」を構成していたと考えられています。出土した木簡には「播信郡」という表記も見られ、古代における行政区域の複雑さを物語っています。郡衙は、千曲市屋代にある屋代遺跡群に比定されています。和名類聚抄には、倉科、磯部、船山、大穴、屋代、英多、坂城といった郷名が記載されており、古代におけるこの地域の姿を垣間見ることができます。

近世から明治時代への移行

近世に入ると、埴科郡は幕府領や藩領が入り組んだ複雑な支配構造下に置かれました。幕府領は中之条代官所が管轄していましたが、慶応4年（1868年）には名古屋藩、明治2年（1869年）には伊那県、明治3年（1870年）には中野県の管轄へと移り変わります。明治4年（1871年）には中野県が長野県に改称され、廃[[藩置県]]により藩領は松代県の管轄となりました。しかし、同年、第1次府県統合により、埴科郡全域が長野県の管轄下に統一されました。

その後、明治5年（1872年）から明治9年（1876年）にかけて、村の合併や改称、所属郡の変更など、幾度にもわたる行政区域の変更が行われました。そして、明治12年（1879年）、郡区町村編制法の施行により、行政区画としての埴科郡が発足。屋代村に郡役所が設置されました。

町村制施行以降の変遷

明治22年（1889年）4月1日、町村制が施行されると、屋代町、坂城村、松代町など、多くの町村が誕生しました。その後も、町制施行、村の合併、町と村の合併など、市町村の再編は継続的に行われました。昭和30年（1955年）には、坂城町、中之条村、南条村の合併により坂城町が発足。また、戸倉町、屋代町、埴生町などの合併によって、現在の千曲市や長野市の一部が形成されました。昭和34年（1959年）には、屋代町と埴生町が合併して更埴市となり、埴科郡から離脱しました。昭和41年（1966年）には松代町が長野市に編入され、平成15年（2003年）には戸倉町が千曲市に編入されるなど、近現代においても大きな市町村合併が繰り返されました。現在では、坂城町のみが埴科郡に属しています。

重要な出来事

大正15年（1926年）には警廃事件が発生し、警察署の統廃合に反対する住民が長野市へ押しかける騒動となりました。昭和2年（1927年）には遅霜による農業被害が発生し、養蚕業に大きな打撃を与えました。これらの出来事は、埴科郡の歴史において重要な出来事として記録されています。

まとめ

埴科郡は、古代から現代まで、幾多の変遷を経て現在の姿となりました。歴史的経緯や地理的条件、そして住民たちの意思によって形作られてきたこの地域は、豊かな歴史と自然環境に恵まれ、独特の文化と魅力を有しています。坂城町を中心とした地域社会の未来の発展が期待されます。

もう一度検索