大分県立芸術会館

大分県立芸術会館：地域文化を彩った複合施設の軌跡

大分県立芸術会館は、大分県大分市に位置し、1977年9月の開館以来、地域住民にとってかけがえのない文化拠点として親しまれてきました。愛称は「芸館」。美術館と多目的ホールからなる複合施設で、県内唯一の本格的美術館としての役割も担っていました。

美術館：郷土の芸術を伝える

美術館部門は、開館当時、大分市において本格的な美術館として唯一の存在でした。大分県ゆかりの著名な芸術家の作品を数多く収蔵展示し、郷土の芸術文化の振興に大きく貢献しました。田能村竹田、福田平八郎、高山辰雄、宇治山哲平、朝倉文夫といった、日本美術史に名を刻む巨匠たちの作品が、来館者の目を楽しませました。

多目的ホール：多彩なイベントの舞台

ホール棟には、1,022席を備えた多目的ホール（県民文化会館・文化ホール）があり、コンサートや演劇、講演会など、様々なイベントが開催されました。その音響設備の素晴らしさから、日本音響家協会による「音響家が選ぶ優良ホール100選」にも選定されるほどの高い評価を獲得していました。文化ホールの緞帳は、芸術会館が所蔵する高山辰雄の代表作「豊後」を原画としたものでした。

施設概要

芸術会館は鉄骨鉄筋コンクリート構造の地上3階建て（メインエントランスは2階）で、敷地面積18,924.64㎡、建築面積4,345.37㎡、延床面積7,301.98㎡を誇る大規模な施設でした。設計は安井建築設計事務所が担当しました。展示棟は2階建てで、第1～第3展示室のほか、収蔵庫などを備えていました。ホール棟は3階建てで、1,022席の客席を有するメインホールと、その他付帯施設から構成されていました。管理棟も3階建てで、事務室や倉庫などが配置されていました。

利用状況の変化と閉鎖

1998年に大分県立総合文化センターを有するOASISひろば21が開設されると、芸術会館の利用状況は変化を始めます。学校行事や県内芸術文化団体による利用は増加したものの、全体的な利用率は低迷。加えて、2010年には文化ホールで基準値を超えるアスベストが検出され、改修費用として7億円もの巨額な費用が必要となることが判明しました。これらの問題を踏まえ、大分県は2012年3月末をもって芸術会館の閉鎖を決定しました。文化ホールは2012年3月末に、その他の施設は2014年11月末に利用を終了し、2015年3月31日に全館閉鎖となりました。

新県立美術館の建設と芸術会館のその後

芸術会館の老朽化などを背景に、大分県は2010年から県立美術館の建設構想を進めていました。2011年、OASISひろば21隣接地に新美術館の建設が決定。新美術館の開館（2015年4月24日）に伴い、芸術会館は閉鎖されました。閉鎖後、建物は改修され、2017年4月には大分県立埋蔵文化財センターが移転して新たな役割を担うようになりました。しかし、文化ホールの緞帳は現在も引き取り手がなく、その行方が注目されています。

交通アクセス

芸術会館へのアクセスは良好でした。JR九州日豊本線牧駅から徒歩5分、大分バス芸術会館入口停留所から徒歩2分と、公共交通機関を利用したアクセスが容易でした。

大分県立芸術会館は、半世紀近く地域に貢献した文化施設でした。その歴史と役割は、新たな施設へと引き継がれ、これからも大分県の文化発展に貢献していくでしょう。

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