天授庵

天授庵

天授庵は、京都市左京区にある臨済宗南禅寺派の寺院で、南禅寺の塔頭の一つです。山号は瑞龍山、本尊は釈迦如来。

歴史

天授庵は、南禅寺第15世住持である虎関師錬（こかんしれん）が、南禅寺の開祖である無関普門（むかんふもん、大明国師）を祀るために暦応2年（1339年）に創建されました。無関普門は正応4年（1292年）に東福寺龍吟庵で亡くなりましたが、南禅寺にその塔所がないことを惜しんだ虎関師錬が、光厳上皇の勅許を得て建立に至りました。

しかし、天授庵は度重なる火災に見舞われ、明徳4年（1393年）と文安4年（1447年）の南禅寺大火、さらには応仁の乱によっても焼失し、戦国時代には衰退しました。その後、慶長7年（1602年）に歌人としても知られる細川幽斎（ほそかわゆうさい）によって再興され、現在に至ります。

境内

境内には、方丈、書院、茶室などがあり、美しい庭園が広がっています。

方丈（京都市指定有形文化財）：本堂にあたる建物で、慶長7年（1602年）に細川幽斎によって再建されました。柿葺（こけらぶき）屋根が特徴で、内部は長谷川等伯（はせがわとうはく）筆の障壁画で飾られています。

障壁画（重要文化財）：長谷川等伯筆の障壁画は、禅宗の祖師の悟りの境地を描いた「禅機図」や、秦末の賢人「商山四皓図（しょうざんしこうず）」などがあります。等伯独特の筆遣いが見どころです。

方丈前庭（東庭）「淵黙庭（えんもくてい）」：白砂と苔、菱形の畳石が美しい枯山水庭園で、小堀遠州（こぼりえんしゅう）の発案による直線的な構成が特徴です。

書院南庭：杉や楓が茂る池泉回遊式庭園で、南北朝時代の面影を残しています。

茶室「松関の席（しょうかんのせき）」：妙喜庵（みょうきあん）の茶室「待庵（たいあん）」を模したもので、明治32年（1899年）に移築されました。

その他、境内には細川幽斎とその妻・マリアの墓、細川家の墓、横井小楠（よこいしょうなん）の墓、新島襄（にいじまじょう）の父・新島民治（にいじまたみじ）の墓、今尾景年（いまおけいねん）の墓などがあります。

文化財

天授庵には、数多くの文化財が所蔵されています。

重要文化財

木造大明国師像
絹本著色無関普門像：無関普門の生前に描かれた唯一の寿像
紙本墨画淡彩聖一国師（円爾）像：円爾自賛像としては最初期のもの
絹本著色平田慈均像2幅
絹本著色細川幽斎像・幽斎夫人像
方丈障壁画32面
紙本墨画禅機図　16面（室中）
紙本墨画商山四皓図　8面（上間）
紙本墨画松鶴図　8面（下間）
九条袈裟（田相黄山道文綾 条葉紺繻子地諸尊花鳥文刺繍）：無関普門所用と伝わる

京都市指定有形文化財

方丈
山門

その他の文化財

天馬賦（池大雅筆）

アクセス

* 京都市営地下鉄東西線蹴上駅下車　徒歩

周辺情報

天授庵は南禅寺の塔頭であるため、周辺には南禅寺をはじめとする多くの寺院や文化施設があります。また、琵琶湖疏水や哲学の道など、自然豊かな観光スポットも点在しています。

まとめ

天授庵は、歴史と文化が豊かな寺院であり、美しい庭園や貴重な文化財を通して、禅の精神に触れることができます。四季折々の風景も魅力で、訪れる人々を魅了し続けています。

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