天童藩

天童藩の歴史と特性

天童藩（てんどうはん）は、羽前国（旧出羽国）に位置し、織田家が支配していた藩である。現在の山形県天童市周辺がその中心であり、藩庁は天童陣屋に設けられた。

この藩は、文政11年（1828年）に織田信美によって高畠藩から拠点を天童に移し、天保元年（1830年）に正式に立藩された。わずか2万石の規模であった天童藩は、財政的に厳しい状況にあり、家臣の俸禄を借り上げ、徹底した倹約を求める政策を実施した。また、安政2年（1855年）には、紅花の専売制を試みたものの、改革は期待に反して失敗に終わった。

民間では、専売制に対する不満が民謡として伝えられ、「裸裸足で紅花さしても織田に取られて因果因果」という表現が残されている。専売制の過酷さは、一時的な不満を産み出したが、藩の文化や産業への影響もあった。一方で、将棋の駒作りが奨励され、天童市は将棋の町としての基礎が築かれた。これは、当時の武士たちの趣味や余暇活動として、将棋が広がっていったことを意味している。

慶応4年（1868年）には、藩主であった織田信学が新政府から上洛するよう命じられた。信学が病気だったため、嫡男の信敏が代理で東京に出向くこととなる。この際、新政府から奥羽鎮撫使の誘導を任された織田家の重臣、吉田大八は新政府軍の道案内役を務めた。4月には、吉田が奥羽鎮撫副総督の澤為量を率いて庄内藩との戦闘に臨むも、激しい攻撃により大敗。それに伴い天童城下は焼き討ちにあった。

翌5月、奥羽越列藩同盟が形成されると天童藩も同盟軍に参加せざるを得なくなり、吉田は切腹の運命をたどった。結局、新政府軍の反撃を受けて、藩は9月に降伏。織田信敏は家督を弟の寿重丸に譲渡し、自身は隠居する形となり、所領は2000石を剥奪されたが、寿重丸が幼少であったために信敏が再び藩主に戻ることとなった。

1869年、明治4年（1871年）には廃藩置県が実施され、天童藩は天童県に転換され、その後、山形県に編入されることとなった。織田家はこのころ、異なる系統でいくつかの藩を有していたが、天童藩と柏原藩が信雄の子孫であり、織田長益（有楽斎）の系統は柳本藩や芝村藩を改編して存在していた。

民間文化についても言及すると、天童藩の江戸留守居役であった吉田専左衛門は、歌川広重と親交があり、彼の肉筆画は「天童広重」と呼ばれ、現在も村山郡内に保存されている。また、織田信長の神号も下賜され、明治3年（1870年）には舞鶴山上に建立された建勲神社がその例である。

歴代藩主

• - 織田信美
• - 織田信学
• - 織田信敏
• - 織田寿重丸
• - 織田信敏（再任）

天童藩は、幕末の出羽国において小さな藩ながらも、歴史的な重要性を持ち、文化の発展に寄与したことを特筆すべき存在である。

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