織田信敏

織田信敏：激動の時代を生きた天童藩主

織田信敏は、出羽国天童藩の第3代藩主であり、後に藩知事となった人物です。従五位下兵部大輔に叙任され、のちに従三位となり、子爵の爵位も授けられました。

信敏は、第2代藩主織田信学の四男として江戸で誕生しました。幼名は富久之助。文久3年(1863年)、父・信学の嫡子となり、将来の藩主としての道を歩み始めます。

慶応4年(1868年)の鳥羽・伏見の戦い後、新政府は徳川慶喜の征討を決定し、諸藩に上洛を命じました。父・信学は上洛を遅らせていましたが、病気を理由に信敏を上洛させました。その結果、信敏は新政府から奥羽鎮撫使の先導役を命じられます。しかし、信敏は藩士の吉田大八を名代とし、自身は明治天皇への拝謁を果たしました。

父・信学の隠居に伴い、信敏は正式に藩主となりました。そして、従五位下兵部大輔に叙任されます。先導役となった吉田大八は和平工作に尽力しましたが、奥羽鎮撫総督軍と庄内藩の対立は激化し、閏4月4日には庄内藩が天童城下を焼き討ちにしました。信学とその家族は奥羽山脈を越え、仙台藩領に逃れました。

庄内藩が撤退した後、天童藩は反撃を試みますが、奥羽鎮撫総督府参謀世良修蔵が暗殺されると、戦況は幕府側に傾き始めました。混乱の中、信敏は天童陣屋に入り、奥羽鎮撫使先導役を辞退しました。新政府からは見舞金を受け取りますが、その後、天童藩は奥羽越列藩同盟に加入します。しかし、同盟の劣勢を悟り、明治元年(1868年)9月18日、新政府に降伏しました。

東京での謹慎を命じられた信敏は、菩提寺の高林寺で謹慎生活を送りました。新政府は信敏に減知と隠居を命じ、弟の寿重丸に家督を相続させました。しかし、寿重丸が幼少だったため、明治2年(1869年)には信敏が天童藩知事として再任されました。明治4年(1871年)の廃藩置県により、知事を免職となります。その間、織田家始祖である織田信長を祀る建織田社（後に建勲神社に改称）を創建しています。廃藩置県後には慶應義塾で英学を学びました。明治5年(1872年)には銀座大火で自邸を焼失するなど、私生活でも幾多の困難を経験しています。

明治7年(1874年)には宮内省に出仕しましたが、すぐに退職。明治17年(1884年)には子爵に叙爵されました。そして明治34年(1901年)、48歳で生涯を閉じました。

信敏の生涯は、戊辰戦争という激動の時代を生き抜いた藩主としての苦悩と決断、そして近代日本への対応という複雑な課題に直面した歴史の一端を垣間見せてくれます。彼の行動は、時代の大きな流れの中で翻弄されながらも、懸命に生きようとした一人の藩主の姿を物語っていると言えるでしょう。 彼の功績は、天童藩の歴史において、重要な位置を占めていることは間違いありません。

家族

父：織田信学
母：徳（側室）
妻：松前増子（松前崇広の娘、後に離婚）
子女：織田栄子（次女、子爵織田信恒夫人）
* 養子：織田寿重丸（実弟）、織田信恒（相馬誠胤の長男）

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