実体

実体：古代ギリシアから現代思想における概念の変遷

はじめに

「実体」(substance)は、古代ギリシア[[哲学]]から用いられてきた重要な哲学用語です。基本的には「真に存在するもの」を意味しますが、その解釈は時代や哲学体系によって大きく異なります。本稿では、「実体」概念の歴史的変遷と、主要な哲学思想におけるその捉え方を解説します。

古代ギリシア[[哲学]]

実体概念の起源は、ミレトス学派の「アルケー」(万物の根源)という概念に遡ることができると考えられますが、より重要なのはエレア学派のパルメニデスです。パルメニデスは、厳格な論理を用いて生成変化を否定し、「存在」こそが唯一の実体であると主張しました。彼の議論は、同一律と矛盾律に基づいており、あるものが別のものへと変化するということは、存在と非存在が同時に成立することを意味し、これは矛盾であるとされました。したがって、感覚的に捉えられる生成変化する世界は、真の実体ではないとされました。

このパルメニデスの考えに影響を受けつつも、感覚世界における生成変化という現実を認めようと試みたのが、レウキッポスとデモクリトスの原子論です。彼らは、生成消滅しない無数の原子と空虚を真の実体とし、原子の組み合わせと分離が感覚世界における生成変化を生み出すと説明しました。

プラトンは、感覚的に捉えられる世界(現象界)とは別に、真に存在するイデアの世界を想定しました。プラトンにとって、実体は感覚ではなく理性によってのみ捉えることのできるイデアのみです。

アリストテレスは、個々の具体的な存在物(第一実体)と、種や類などの普遍者(第二実体)を区別しました。第一実体は、述語によって記述される主体であり、それ自体は述語になりません。また、アリストテレスは形相と質料の概念を用いて、形相を第一実体の構成要素の一つとして位置づけました。

近世哲学

デカルトは、心身二元論を唱え、精意識'>[神]と空間'>[物体]をそれぞれ独立した実体とみなしました。精神は思惟を本質とし、物体は延長を本質とします。この考え方は、自然科学の発展に大きな影響を与えましたが、同時に心身問題という困難も提起しました。

スピノザは、神のみを実体とみなし、精神と物体は神という唯一の実体の異なる属性にすぎないとしました。これにより、デカルト的な心身問題を回避しました。

ライプニッツはモナドという概念を用いて、実体を説明しました。モナドは、単純で非延長的な実体であり、相互に作用するかに見えるものの、実際には独立しています。

近現代哲学

ヘーゲルは、実体を絶対知へと自己展開する精神と捉えました。ニーチェは実体概念を生成の観点から批判しました。ソシュールは、言語における記号が実体を直接的に表すのではなく、「価値」を表す形式であるとしました。

結論

「実体」という概念は、哲学の歴史の中で様々な解釈をされてきました。古代ギリシア[[哲学]]における存在論的な議論から、近世哲学における心身問題、そして近現代哲学における言語哲学まで、「実体」概念は哲学における中心的なテーマの一つであり続けています。本稿では、その多様な解釈の一部を紹介しましたが、それぞれの哲学体系における文脈を理解することで、「実体」という概念の深遠さと複雑さをより深く理解できるでしょう。 それぞれの哲学者の思想を詳細に探求することで、さらに深い理解が得られるでしょう。それぞれの哲学者の著作や、それらを解説した専門書を参照することをお勧めします。

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