富岡永洗

富岡永洗（とみおか えいせん）

富岡永洗（1864年4月28日 - 1905年8月3日）は、明治時代の浮世絵師であり、絵画の美しさと独自のスタイルで知られる日本画家です。特に艶やかな美人画でその名声を高めました。水野年方や武内桂舟と並ぶ人気を誇り、小林永濯の教えを受けた弟子としても知られています。彼は通称「秀太郎」とも呼ばれ、また「藻斎」という号も名乗っていました。

来歴

富岡は、信濃国松代藩士の家庭に生まれました。父親である富岡芳山も絵師であり、彼自身も文化的な背景を持って成長しました。初めは独学で絵を学び、その後、陸軍参謀本部で製図の仕事をしながら、18歳で小林永濯のもとで浮世絵の技術を習得し始めました。画業の合間には雑誌の挿絵も手掛け、特に艶やかな美人画で注目を集めました。彼の画風は当時の流行を反映した典型とも言われており、後の鏑木清方に影響を与えたとされています。

永洗は自身の師である永濯の死後、官職を辞し、本格的に画業に専念することを決意します。特に風俗画を得意とし、明治23年からは『都新聞』に入社し、挿絵画家として活動しました。この新聞は当時、下町の粋な層をターゲットにしており、永洗の挿絵はその魅力を引き立てて、多くの読者の心を掴みました。彼の作品が掲載されることで、新聞の売上が大いに変わるほどの人気を博しました。彼の妖艶な美人画は、時代物や現代の人々を描く上で特異なスタイルを持ち、彼の名声を確立させる要因となりました。

作風と受賞歴

明治20年代から30年代にかけて、永洗は肉筆浮世絵の美人画として名を馳せ、多くの作品が評価されました。肉筆画のほか、小学校教科書や雑誌の口絵も手掛けており、また、春画にも挑戦するなど、その活動は多岐に渡りました。松本楓湖や梶田半古と共に日本画会を創立しましたが、後に退会しています。同時期に岡倉覚三（天心）と関わりを持ち、日本美術院の特別賛助員としても貢献しました。岡倉は挿絵画家出身の永洗を厚遇し、彼は円滑に美術院と各界を繋ぐ存在と見なされました。

明治31年には日本絵画協会・日本美術院連合絵画共進会で「今様美人」として一等褒状を受賞しています。

晩年と影響

晩年に入ると永洗は本格的に画家としての道を歩むようになり、風俗画や歴史画も多く手がけるようになりました。しかし、明治38年、結核により42歳という若さで亡くなりました。彼の墓所は港区南青山の玉窓寺にあります。その法名は「永洗院文彩秀徳居士」です。永洗は多くの弟子を育て、谷洗馬、浜田如洗、井川洗厓など、彼の流派を引き継ぐ画家たちが多く存在します。

作品

彼の代表的な作品として以下の日本画や錦絵があります。

• - うき秋（石川県立美術館所蔵）
• - 嫁入（石川県立美術館所蔵）
• - 煤払（石川県立美術館所蔵）
• - 雪の日（石川県立美術館所蔵）

また、春画として「やくものちぎり（八雲の契）」も知られています。

富岡永洗はその活動を通じて、明治時代の浮世絵と日本画に多大な影響を及ぼし、今なお多くの人々に愛され続けています。

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