射礼

射礼（じゃらい）について

射礼は、毎年正月17日に行われていた宮中の伝統的な弓射（ぶしゃ）競技のひとつです。この儀式は『日本書紀』でも言及されており、古代から宮中で弓道が行われていたことが確認できます。最も古い記録によれば、清寧天皇4年の9月1日（西暦483年10月17日）には弓の競技が既に存在していたとされています。

射礼の原型は天武天皇4年の1月17日（675年2月17日）に行われた儀式に遡ります。この当時、射礼は「大射（おおゆみ）」と呼ばれており、正月中旬に大きな的を射ることが規定されていました later later、節度を重んじる意味で「射礼」と改称されました。

射礼の実施にあたり、まず当日の2日前の1月15日に兵部省が親王を含む五位以上の官人から射手候補を選出します。選ばれるのはおよそ30名であり、そこから射手として選抜される20名に絞り込まれるまで、調習などが行われました。このプロセスは「兵部手結（てつがい）」と呼ばれ、射手の選定に重要な役割を果たしていました。

また、選定とは別に、六衛府や東宮坊でもそれぞれ関係のある官人から手結を行い射手を選びました。本番当日、天皇が臨席の下、豊楽殿で射礼が行われました。特に、三重の円規を設けた2尺5寸の板的が南北に設置され、慣例として近衛府と左兵衛府は北側を利用し、右兵衛府と衛門府は南側を担当しました。

射手たちは的から36歩離れた場所から矢を放ち、兵部省の官人による呼びかけに応じて射撃を行いました。優れた射手に対しては、射礼の成果に応じて天皇からの褒美や宴への招待がありました。ただし、すべての射手が矢を射終わる前に日没を迎えた際には、「射遺（いのこし）」として翌日へと持ち越されることもありました。

時が経つにつれて、豊楽殿が崩落したため射礼の場所は建礼門前の大庭に移行され、天皇の出御もなくなりました。そのため、射礼は上卿のみが主導する形になり、親王や五位以上の射手による射礼は行われなくなり、六衛府の官人のみが射手となることが一般化しました。この変化により、射手の質も低下し、かつてあった射遺がよく行われるようになりました。

それでも、北朝の後光厳天皇の時代については射礼が行われていたとされていますが、光厳天皇以降、射礼は次第に廃絶に向かいました。これにより、この重要な伝統が途絶えることとなります。射礼の歴史は、日本の文化の中での弓道の重要性や、宮中儀式の変遷を示す貴重な資料として語り継がれてきました。

関連項目

• - 天覧試合

参考文献

• - 鈴木敬三「射礼」『国史大辞典 7』（吉川弘文館 1986年）ISBN 978-4-642-00507-4
• - 近藤好和「射礼」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）ISBN 978-4-09-523002-3
• - 山中裕「射礼」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）ISBN 978-4-04-031700-7

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