上卿

上卿とは

上卿（しょうけい、じょうけい）は、平安時代以降の朝廷において、公卿が関わる組織や儀式・政務・公事などの各種行事における役目の中で、筆頭の者を指します。時には、上卿の資格を持つ公卿そのものを指す別称としても用いられました。

上卿の種類

上卿には、主に以下の2つの種類があります。

1. 太政官における上卿（一上）
律令制下の行政機関である太政官の最高審議機関「陣定（陣議）」において、議長を務める最高位の公卿を指します。
通常は左大臣が、欠員の場合は右大臣または内大臣が「一上」として太政官の長となり、会議を主宰しました。
摂政・関白は天皇の補佐役であるため、陣定には参加しませんでした。また、太政大臣は名誉職であるため、太政官の会議を主宰することはありませんでした。
一上は、会議の準備から運営、天皇への上奏、摂関への報告、公文書の発給手続きなど、多岐にわたる業務を担いました。
天皇・摂関の裁可が必要な文書は「奉勅宣」、上卿の判断で裁可・発給が可能な文書は「上宣」と称しました。
一上が不在の場合、当日の参加公卿の中で最上位の者が「日の上卿（日上）」として会議を主宰しました。ただし、中納言以上の公卿に限られ、参議のみの場合は会議は成立しませんでした。

2. 行事における上卿（行事上卿）
年中行事を取り仕切る行事所の長官として、前年末に除目によって担当の公卿が任命されました。
節会や祈年穀奉幣は一上が「内弁」として、大嘗会や仁王会は大納言が「検校」として担当することが慣例でした。
行事上卿は、参議が務めることもありましたが、国忌、大祓、吉田祭、梅宮祭といった小規模な行事に限られました。多くの行事は中納言以上の公卿が担当しました。

院政期以降の上卿

院政期以降には、別当と呼ばれていた所の長官や寺社との取次役も「上卿」と称されるようになりました。

記録所の長官などがその例です。
伊勢神宮、賀茂神社、六勝寺などの重要な社寺に関する奏宣を担当し、宣下によって任命されました。
この寺社との取次役は、鎌倉時代後期以降、「寺社伝奏」へと発展したと考えられています。

上卿の役割と知識

上卿は、準備から後処理まで、様々な手続きや作法を熟知している必要がありました。そのため、公卿には故実に関する深い知識が求められ、上卿の経験を通して、その知識を深めていきました。

まとめ

上卿は、平安時代から朝廷において重要な役割を担った役職であり、その役割は時代とともに変化してきました。太政官の会議を主宰する一上、行事を取り仕切る行事上卿、院政期以降の寺社との取次役など、様々な場面でその名が見られます。上卿を務める公卿には、広範な知識と経験が求められ、朝廷の運営に不可欠な存在でした。

参考文献

土田直鎮「上卿」『国史大辞典 7』（吉川弘文館 1986年）
米田雄介「上卿」『日本史大事典 3』（平凡社 1993年）
橋本義彦「上卿」『平安時代史事典』（角川書店 1994年）
古瀬奈津子「上卿」『日本歴史大事典 2』（小学館 2000年）
齋藤融「上卿」「日上」『日本古代史事典』（朝倉書店 2005年）
『岩波講座　日本通史』第6巻（岩波書店1995年）
池上裕子編、小和田哲男編、小林清治編、池享編、黒川直則編『クロニック 戦国全史』(講談社、1995年)

関連項目

一上
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