尋

尋（ひろ）とは

尋（ひろ）は、古代中国および日本の長さを表す単位であり、両手を左右に広げたときの幅を基準とする身体尺です。この単位は、特に建築や造船、漁業などの分野で使用されてきました。

中国における尋の定義

中国では、尋（じん、xún）は古代の長さの単位として位置づけられており、『大戴礼』や『説文』などの古典文献に見られます。この単位は、もともと一人の大人が両腕を全開に広げた長さ、つまりアームスパンを基準として定義されました。

一般的には8尺（1尺は約23cm）であるとされますが、歴史の中でその使用は次第に減少していきました。また、尋の2倍にあたる「常」（じょう）という単位も存在し、これら二つの単位を組み合わせることで「尋常」という言葉が生まれました。これは「わずかばかりの土地」という意味で使われ、後に「普通であること」や「一般的な状態」を示す言葉として定着しました。

日本の尋の使用

日本でも、尋（ひろ）という単位は両手を広げた長さを指し、その由来は中国の尋と同様です。『古事記』には「八尋殿（やひろどの）」や「千尋縄（ちひろのなわ）」という表現が存在しますが、これらは具体的な長さよりも広い空間や距離を示すための喩えであると理解されています。

過去の文献やインターネット検索によると、学術的な観点からは1尋を約6尺（約1.8メートル）とすることが多いですが、具体的な業務においては1尋を5尺（約1.5メートル）とする事例が目立ちます。実際、千葉県立関宿城博物館や千葉県立中央博物館に所蔵されている利根川高瀬船の板図にも、1尋が5尺として示されていることが確認されています。

明治時代の法令

明治5年の壬申年（1872年）、太政官は布告第130号において「尋は曲尺六尺を似て一尋と定む」と述べました。この決定は、英国からの技術指導を受けて海図が作成される際、水深の単位としてファゾム（fathom）の訳語に「尋」を当てたことに起因しています。ファゾムは6フィート、したがって1尋は6尺と定められたのですが、これは一般的な尋の用法にも適用されたかもしれないと考えられています。

字源と象形文字

尋の字源は甲骨文字に見られるもので、両腕を広げて長さを測る様子を象った象形文字です。最初から「寸」という文字が加わり、手に関連する意味を持つようになりました。また、後に「舟」を意味する別の単語を表記するためにこの文字が使用されることもありました。その結果、字形が変化し、最終的には現代の「尋」という形になりました。

現在、「尋」の字には「工」と「口」が含まれていますが、この二つを「左」「右」の文字に関連づける分析は誤りです。このことは、漢代以前の文字資料を調べることで明らかになります。

まとめ

「尋」という単位は、古代より人々に広く用いられてきた長さの指標です。中国や日本におけるその使用方法や歴史的変遷を考慮することで、時代背景や文化の変化を理解できることができます。このように、尋は単なる数値だけでなく、文化や生活様式の中に深く根ざした言葉でもあるのです。

もう一度検索